憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2

 憲法改正って何?

前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ

登場人物
 さら
 まこと
 麻衣(まい)
 蓮(れん)
 店長

蓮 「そうだよな。「何も分からなかったんだ」とか「気がついたら変わってたんだ」とか言っちゃいそうだけど、それって言い訳だもんな」

麻衣「でも、日々のことばかりに追われて、国がどうなっているかなんて、そんな大きな事なかなか考えられないよ」

さら「確かに、そういうことはあると思うわ。でも、独裁国家ではなく、民主主義国家なんだもの、この国が変わってしまえば、それは私たちの責任なのよね。子どもたちに、良い国を渡してあげるのは、私たちの義務だと思うわ」

蓮 「そうだよな。「ごめん。こんなもんしか渡せなかった」なんていうのは、格好悪いもんな」

麻衣「そうよね。少しは頑張らなくっちゃね」

さら「一人で頑張る必要は無いわ。この国には、1億人も一緒に考えてくれる仲間がいるんだもの。みんなで知恵を出し合えば、良い未来が作れるわ」

麻衣「でもさ、逆に考えると、悪い方向に変えようとする仲間も1億人いるかもしれないってことでしょ。それって怖いな」

蓮 「おいおい、いきなり後ろ向きだな。それを止めるにはどうしたら良いかって事を、考えれば良いじゃんか」

麻衣「それも、そうね。やる前から諦めちゃうって、格好悪いもんね」

蓮 「そういうこと。ということで、さら、憲法改正について教えてくれるかな」

さら「憲法改正には、衆参で3分の2の賛成と、国民投票が必要だということは知ってる?」

蓮 「なんとなく」

麻衣「それくらいなら、なんとか分かるわ」

さら「憲法改正は、何でも変えられるわけではなくって、限界があると言われているの」

蓮 「限界?」

さら「一応、理論的には、日本国憲法の三大原則は、憲法改正によっても変えられないと言われているの」

麻衣「三大原則?」

さら「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義ね」

麻衣「じゃあ、憲法改正されても、平和が無くなるとか、人権が無くなるとか言ってるのは、嘘って事ね」

さら「それが違うのよ」

麻衣「どう違うの?」

さら「憲法違反と言われる安保法制が、一昨年国会を通過したことを覚えている?」

麻衣「うん。それくらいは、覚えているわ」

さら「憲法に違反する法律は無効とされるというのだけど、最終的に裁判所で決定されるまでの間は、その法律はどうなると思う」

麻衣「無効なんだから、使われないんでしょ」

さら「違うわ。裁判所で無効とされない限り、有効であるとして使われてしまうの。だから、今年に入って、改正された安保法制を根拠に自衛隊が南スーダンへ派遣されたわ」

蓮 「えー、無効なのに有効なの??」

さら「そう。形式上法律が制定されてしまえば、本当は無効であっても、国はどんどん進んでしまうの」

蓮 「それじゃ、憲法改正だって、三大原則は変えられないって言っても、実際に憲法が改正されてしまったら、そのまま国は動いてしまうってこと?」

さら「その通り。改正に限界があると言っても、実際に改憲されてしまったら、元に戻すことはなかなか難しいわ。裁判所に判断してもらえば良いという考えもあるけど、憲法改正の可否は、高度に政治的であるとして裁判所は判断しない可能が高いの。だから、憲法改正については、国民投票になる前からしっかりと考えていないといけないわね」

麻衣「しっかりテレビの情報をもとに考えるってことね」

さら「そうとも言えないのよ」

麻衣「どうして?」

さら「さっきも少し言ったけど、マスコミは役割をきちんと果たしてないと思うの。去年の参議院選の時、ほとんど憲法改正の議論がされなかったわ。でも、参議院選挙の争点は、本当は憲法改正の是非だけだったの」

麻衣「え!? そうだったの?」

さら「衆議院は与党が過半数をとっていて、参議院でも過半数は間違いない情勢だったでしょ。そうすると、通常の政策は、今までと変わらないことは分かり切っていたのよね。だから、現実的な争点は、憲法改正の発議に必要な3分の2を改憲勢力がとるか否かだったの」

蓮 「あー、だから投票後の選挙特番になったら、急に3分の2の攻防とか言い出したんだ」

麻衣「最初からわかってるんだったら、選挙前に報道してくれれば良いのに」

さら「そうね。事情がよくわからない市民のために、表面上の公約に捕らわれずに、選挙の意味をきちんと伝えることがマスコミの役割なのよね」

蓮 「でも、マスコミはその役割を放棄しちゃったって事なのか」

麻衣「ほんと、そうよね。といっても、あまり真剣に見てなかったってのもあるから、私も悪いのかな・・・。でもさ、憲法改正が争点だって、分かりやすく、きちんと伝えてくれたらいいのに・・・」

さら「マスコミがどうして争点隠しに手を貸したのか、詳しい事情はわからないわ。でも、マスコミがきちんと伝えなかったことで、選挙の争点が憲法改正だと分からなかった人が多かったことと、関心を持たないで棄権してしまった人が増えたことは間違いないと思うの」

麻衣「そうね」

蓮 「同感」

さら「憲法改正の際は、国民投票が行われるんだけど、今の参議院選挙のマスコミ報道と同じ事が行われると、どういう影響があると思う?」

蓮 「改正された場合に、何が変わってしまうのか、よくわからないまま投票してしまうってことかな」

麻衣「憲法改正の国民投票があるなんて知らない人が出てしまうと思うわ」

蓮 「他には・・・・自分に関係ないと思って、棄権してしまう人が増えちゃうかな。でも、国民の半分が賛成しないと、憲法って変えられないんだよな。だったらこれは違うか」

さら「いいえ、あってるわ」

蓮 「えっ?」

さら「国民投票には、最低投票率が決められてないの。それから更に注意しなければならないのは、白票などの無効票を除いた有効得票数の過半数で足りるという点ね」

蓮 「えぇ!?・・・ってリアクションしてみたけど、よくわからん。結局どう問題になるんだ?」

さら「えっと、そうねぇ・・・。例えばこんな呼びかけがあったらどう思う? 『私たちは憲法改正手続きなど望んでいません。このような投票が行われること自体に反対の意思を表明するために、国民投票をボイコットしましょう』とか『国民投票が行われることに反対の意思を表明するために、白票を投じましょう』とかね」

蓮 「んー、そうだな。俺たちが望んでいないのに、憲法改正の手続きを勝手に進められたって気持ちがあったら、そういう怒りの意思表示のためにボイコットしたいって気持ちも分かるな」

さら「他にも、わざわざ投票所まで行って反対票を投じるよりも、何もしないで反対の意思表示ができればその方が望ましいとか、よくわからないから反対とまではいえないけど、白票ならいいかって、考える人もいるかもしれないわ」

蓮 「おー、確かにそういうのもありそうだな。で、それがどうしたんだ?」

さら「これらの呼びかけを真に受けてボイコットや白票を投じてしまうと、憲法改正の賛成票が重みを増してしまうの」

蓮 「えっ? どういうこと?」

さら「最低投票率がないということは、ボイコットは反対の意思表示にならないということなの。結果は、ボイコットの数に関係なく、有効投票の数だけで決まってしまうわ」

蓮 「じゃあ、ボイコットなんて意味ないじゃん」

さら「そのとおりね。それから白票も反対の意思表示にならないの。実際に投票された数ではなく、白票などの無効票を抜かした、有効得票数しかカウントされないのよ」

蓮 「えー、じゃあ、極端な話、99%がボイコットして、1%した投票しなかった。しかも、投票した人のうち、99%の人が抗議の白票を投じた。その場合は、99.99%の人たちの意思は全く無視されてしまい、有効投票をした0.01%の人たちの過半数、つまりたった0.005%の人たちが憲法改正に賛成だったら、改正されちゃうってことか?」

さら「そういうことになるわね。ボイコットや白票を投じることは抗議の意思表示だと、その人は思っているかもしれない。でも、現実の投票においては、抗議の意味がないどころか、かえって改憲改正に寄与する結果になってしまうわ」

麻衣「ねえねえ。ボイコットや白票だって、今の憲法でいいって言う意思表示なのに、なんでその意見が無視される投票制度になっちゃったの?」

蓮 「そうそう、おかしいよな。憲法改正って、変えたい人たちが多いから変えるって話だろ。ボイコットや白票が沢山あれば、それは変えたくないって意見が多いってことなのにさ。それなのに、今のままでいいって意見が一番反映されない形っていうのは、どういうことなのさ」

さら「最低投票率をもうけるべきだという意見や、無効票も含めた過半数にすべきだという意見はもちろんあったわ。でも、その意見は採用されなかったの」

蓮 「憲法改正したい人たちの意見が採用されたってことか」

さら「そういうことね」

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ へつづく・・・・

憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?
憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで

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