憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8

緊急時も濫用防止!

前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?

登場人物
 さら
 まこと
 麻衣(まい)
 蓮(れん) 
 店長

さら「ところでさ、ねえ、まこと」

まこと「ん?」

さら「さっきから、新たな立法が必要な場合について話してるけど、災害対策基本法の緊急措置のことを忘れてない?」

まこと「あ、そうか。その話があったか」

麻衣「何なに、緊急措置って」

さら「参議院の緊急集会とは別の、緊急時の対応策よ。まことが今説明していた緊急集会の他に、委任命令があるの。そして、災害対策基本法に設けられた委任命令は、緊急措置と呼ばれているの」

麻衣「????」

さら「えっと、最初から説明した方が分かりやすいかな。国会は唯一の立法機関って言葉を聞いたことがない?」

麻衣「法律を作れるのは、国会だけって事でしょ」

さら「そう。国会って、国民が選挙で選んだ国会議員から成り立っているでしょ。つまり、自分たちが守らなければならない法律は、自分たちの代表者が作るってことなの。もし特権階級の人に法律を作らせたとしたら、自分たちには適用されないんだから、厳しい法律も躊躇なく制定しちゃって、庶民は苦しむかもしれない。でも、自分たちのことは自分たちで決めれば、むちゃくちゃなことにはならない。だから、国民の代表からなる国会しか法律を作れないとすることで、権力の濫用による人権侵害が起きないようにしているの」

麻衣「また濫用が出てくるのね」

さら「そうね、いつも濫用防止が顔を出すわ。でも、権力者の濫用を防止するために憲法があるのだから、当然と言えば当然よね」

麻衣「なるほどねぇ、憲法の意味が何となく分かってきたような気がする。・・・あ、話の腰を折ってごめん。で、国会がどうしたんだっけ?」

さら「国会は唯一の立法機関といったけど、政府も、政令と言う法律みたいなものを作れるの」

麻衣「じゃあ、国会以外も法律を作れるってこと?」

さら「そう聞こえるけど、そうではない、というところね。国会が定める法律と、政府が定める政令の違いってわかる?」

麻衣「定める人が違うって事?」

さら「それも違いではあるんだけど、一番の違いは、法律と政令には序列があって、法律が上位法、政令が下位法ってことなの。つまり、政令は法律を実行するために設けられるものであって、法律からまったく独立した政令の制定は許されないってこと」

麻衣「えっと、要は、法律が親玉で、政令が子分って感じ?」

さら「そんなイメージで良いと思うわ。政令にも大きく分けて2種類あるの。執行命令と委任命令ね。執行命令は、法律の内容を実現するために、細目的規定を定めたもの。例えば、法律で「届出」とあるので、政令で、その届出の方法や書式を定めるようなものね。もう一方の委任命令は、法律の委任に基づき、私人の権利義務について定めたもの。法律が特定の事項についてある程度抽象的にしか規定せず、具体的内容は制令に任せるという場合ね」

麻衣「どっちも、法律がおおざっぱだから、制令で細かく決めるって事でしょ。何で区別する必要があるの?」

さら「委任命令は、人びとの権利義務を決める内容だってところがポイントね」

麻衣「どういうこと?」

さら「さっきも言ったけど、国会だけが、人びとの権利義務を決める法規を定めることが出来るという原則があるでしょ。でも、今は社会が複雑化し、また国も、社会権を実現するために様々な考慮が必要とされるようになった。こういう様々な要素を考慮し適切な内容とする権能があるのは、少人数の国会では無く、むしろ専門的技術的集団である行政では無いかと考えられるようになってきたの。そのため、国会では大枠を決め、具体的な内容については、政府に任せるという役割分担をするようになった。この役割分担により、法律の委任に基づき、具体的内容を定めた政令が委任命令ね。法律の委任があれば、罰則を設けることも認められるわ。ただし、全て政府に任せてしまうと、国会で決める意味が無くなってしまうので、包括的な委任は許されず、限定された委任に限るとされているの」

麻衣「さらぁ、難し過ぎるよぉ」

さら「そう? うーん、どうやったら伝わるのかな・・・」

まこと「なあ、麻衣。ポケモンGOってしってる?」

麻衣「え、何? 急にどうしたの?」

まこと「まあまあ。で、知ってる?」

麻衣「実際にスマホを持って歩いて、ポケモンが出る場所を探して、仲間にするゲームでしょ。それがどうしたの?」

まこと「運転中にやっていて、死亡事故が起きたってニュース聞いたことある?」

麻衣「うん、聞いたことあるよ。」

まこと「やっぱりポケモンGOを運転中にやることは危険だよね」

麻衣「うん」

まこと「携帯電話で話をしているのと、運転中にポケモンGOをしているのと、どっちが危険だと思う?」

麻衣「どっちも危険だと思うけど、電話は前を見て運転しながら出来るけど、ポケモンGOはよそ見をして、スマホの画面を見ないと出来ないから、前を見ないポケモンGOの方が危ないかな」

まこと「うん、俺もそう思う。携帯電話で話をしている人は取り締まりの対象だから、当然ポケモンGOをやっている人も取り締まる必要があるよね」

麻衣「うん、そうよね」

まこと「でもさ、スマホをいじっていても、ポケモンGOをしているかどうかわからないじゃん」

麻衣「確かに」

まこと「それから、ポケットとの中にスマホを入れていても、実はポケモンGOを立ち上げて、プレイしているかもしれないよね」

麻衣「可能性としてはあるかもしれないわね」

まこと「ということは、ポケモンGOの取り締まりをするためには、スマホを手で持っているかに関わりなく、運転中の全てのスマホをチェックする必要があるってことだよね」

麻衣「えー、どうしたらそんな結論になるの!? ポケモンGOを立ち上げていても、全く画面を見ないなら、問題ないじゃ無い」

まこと「だって、現場の人たちのことを考えてみてよ。運転中にポケモンGOの画面を見ている人をどうやって発見するの?」

麻衣「それは・・・・、白バイで併走して、横から確認するとか」

まこと「誰がポケモンGOをプレイしてるか分からないし、ポケットの中で入れてプレイしているかもしれないのに、そんな取り締まり現実に可能だと思う?」

麻衣「やっぱり難しいよね」

まこと「すると、取り締まりをキチンと行うなら、運転中の全てのスマホをチェックする必要があると思わない?」

麻衣「そう言われれば、そんな気もするけど・・・・。何だかおかしいよ、それって」

まこと「別におかしくないよ。きちんと取り締まる必要があるんだから、実効性を持たせるべきでしょ。すべてのスマホをチェックするためには、警察には検問する権限を与えて、自動車は全て止められるようにする必要がある。そのため、停止しない違反者には罰則を科す。これで、完璧にチェックできるようになるね」

麻衣「確かに、そうすれば完璧に違反者を取り締まれるようになるかもしれないけど、それってやっぱりおかしいよ」

まこと「うん、そのとおり、おかしいよね。実は、今行われている検問って、凶悪犯罪の捜査の場合でも、強制的に自動車を止めることは出来ないんだ。それを、ポケモンGOの取り締まりのために、強制的に止められるようにするのは、やりすぎだよね」

麻衣「そうそう、やりすぎだよ」

まこと「でも、取り締まる方としては、やりやすいことは確かでしょ」

麻衣「まあ、確かに」

まこと「こんな風に、行政が何をした人を取り締まるのか決めちゃうと、自分たちの取り締まりしやすいようにとしか考えないので、取り締まりやすいように、行政が好きなように解釈できる曖昧な基準を設けて、なるべく範囲を広げようとする。そうすると、必要以上に、自由が制限されてしまう。ってことは、何となく分かる?」

麻衣「うーん、何となくなら」

まこと「ところで、トランプ大統領が、入国禁止令を出したってニュースは知ってる?」

麻衣「流石にそれは知ってるわよ」

まこと「この入国禁止令って、今言った話そのままなんだよ」

麻衣「どういうこと?」

まこと「トランプ大統領は、アメリカへのテロリストの入国を防ぐために、入国禁止令を出したんだ。本来ならば、テロを本当に起こす危険性のある人だけ排除すれば足りる。でも、人の心は読めないから、誰がテロを起こすかなんてなかなか分からないよね。いくら諜報機関が頑張っても、テロリストの入国を100%阻止することはできない。それだったら、テロリストが多そうな国からの入国なんて全部禁止してしまえ!、ってやったのが入国禁止令なんだ」

麻衣「へー、まことの話って、荒唐無稽であり得ない馬鹿馬鹿しいものだって思ってたけど、実際にやっちゃう大統領もいるのね」

まこと「なんか酷い言われようだけど、分かってもらえた?」

麻衣「うん、何となく。権力者って、細かいことなんて抜きで、何でも禁止しちゃって思うものなのね」

まこと「そういうこと。だから何度も言っているように、権力は濫用の危険があるって話になるんだ」

麻衣「なるほどね〜」

まこと「で、さっきの法律と政令の話に戻るけど、政令は、行政が定めるものなので、今言ったように、必要以上の制約をしがちだし、官僚や内閣の話し合いだけで済むから、第三者のチェックが入らない。そのため、おかしな内容であっても、そのまま決まってしまう可能性が高い。これが国会での議論だったらどう?」

麻衣「あ! 野党がおかしいって意見を言うだろうし、マスコミが報道すれば、みんなおかしいって声を上げるから、今後の選挙への影響も考慮して、与党も妥協せざるを得なくなり、無難な線に落ち着くって事?」

まこと「Good!」

麻衣「あー、だからさっき言ってた、権利義務については原則として国会で、って話になるのね」

まこと「そういうこと。法律は大枠を定めて、細かいことは行政に任せる場合でも、どこまで任せるか、ちゃんと制限を設けておいて、行政の好きにはさせないようにしておくってこと。それが、さらの言っていた、包括的委任は許されないってことさ」

麻衣「なるほどねー」

さら「ちょっとー、人が説明しているときに割り込まないでしょー。ちゃんと理屈から説明してたのに」

まこと「難しい理屈よりもさ、感覚で掴んでもらった方が良いんだってば。さらは理屈を話し始めると止まらないし、理屈で理解してもらおうなんて思ってたら、日が暮れちゃうよ」

さら「何よー、馬鹿にして! プンプン!」

蓮 「おいおい、怒ってあっち行っちゃったぞ」

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ につづく・・・・

憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?
憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで

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