憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4

憲法改正なのに、市民活動に罰則が!

前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ

登場人物
 さら
 まこと
 麻衣(まい)
 蓮(れん) 
 店長

さら「しかも、憲法改正の場合には更に深刻な問題があって、憲法学者が意見を言えないかもしれないの」

麻衣「どういうこと?」

さら「法律による規制があって、私立の大学教授も含めて、教育者は、その地位を利用することはできないとされているの」

麻衣「地位の利用って? 授業で、賛成に投票しろ、とか言わなければいいってこと?」

さら「何をしたら地位の利用になるかが不明確なの。だから、教授の言うとおりに賛否の投票をしないと卒業されないぞって言うほどの濫用がダメなのか、授業で先生が自分なりの意見を言うことがダメなのか、憲法学者の肩書きを使うことすら禁止されるのか、それは分からないわ」

麻衣「憲法学者って肩書きでテレビに出ただけで、法律違反だってクレームをつけられちゃうってこと?」

さら「そうなる可能性が高いわね」

麻衣「だって、憲法改正なんて難しい話は、その道の専門家が説明してくれないとわからないじゃない。それなのに、憲法学者が話を出来ないってどういうことよ?」

さら「もちろん、どこまでが禁止行為なのか不明確であるから、テレビ局がクレームをつけられても、確固として憲法学者の出演を貫き通してくれれば良いんだけれど」

麻衣「最近のテレビはすぐにクレームに屈しちゃうってことね」

さら「そんな気がしちゃうわよね」

麻衣「もー!、テレビはもっと頑張ってよ!」

さら「他にも問題があって。これは本当に身近な問題なんだけど、市民の運動にも罰則が科されるかもしれないことなの」

麻衣「え! どういうこと?」

さら「・・・実は、みんなで集まってお茶しながら憲法改正の話をしたり、パンフレットを配る行為にもクレームがつくかもしれないのよ」

麻衣「エー!! いやいや、意味わかんないよ」

蓮 「そりゃ、どういうことさ?」

さら「国民投票の法律には、組織的多数人買収及び利害誘導罪というのがあるの」

蓮 「要は、買収禁止ってことか」

麻衣「買収禁止の何が問題なの?」

さら「その規定が曖昧だからいくらでも拡大解釈が可能なのよ」

麻衣「あいまい?」

蓮 「買収を禁止することが、どうして曖昧なんだ?」

さら「ええと。条文を要約すると、だいたいこんな感じかしら。『組織により、多数の投票人に対して・・・』

麻衣「ちょっとまって。『組織』って、犯罪集団ってこと?」

さら「そうじゃないわ。どういう組織なのか、特に限定はないの。だから、ママたちが勉強会を開こうと相談したり、ビラを作ろうと話をしたりしたら、『組織』と認定される可能性があるわ」

蓮 「いやいや、流石にそれはないだろ」

麻衣「そうよ。そんな小さな、しかもお金のない集まりで、買収なんてあり得ないわよ」

さら「それが違うのよね。・・・ねぇ、麻衣は『組織』って、どういうものだと思う?」

麻衣「いきなり難しいこと聞くわね。んーと、そうねぇ。複数の人が、何かの目的のために集まってできた団体のことかな?」

さら「そうね、そういうものだと思うわ。そうすると、話をしていて一緒に何かしましょうか、って意気投合しても、『組織』になっちゃうと思わない?」

麻衣「えー、そうかなぁ? ただ、意気投合しただけでしょ」

さら「んー、それじゃ、団体って何だと思う?」

麻衣「今度は団体かぁ。うーん、何かの集まりとか、仲間とか、かな」

さら「団体っていうけれど、『○○の会』とかを作ろうと思わなくても、何らかの集まりがあったら団体でしょ。そうすると、『組織』っていうのも、特定の団体を作ろうと思わなくても、該当しちゃうと思わない?」

麻衣「うーん、確かに、そうかもしれない。でも、そんなことといったら、誰でも対象になっちゃうじゃん」

さら「そうなのよ。普通に話をしていて、一緒に何かしましょうかって考えることは誰にでもあるわよね。だから、この法律の罰則は、ほとんどすべての人が対象になってしまうの」

蓮 「さら、流石にそれはおかしくないか?」

麻衣「そうよ、おかしいわよ。普通に暮らしている私たちまで、簡単に『組織』だって言われて、犯罪集団みたいに言われちゃうのよ!」

さら「あたしもおかしいと思うわ。でも、そういう法律ができてしまっているのよ」

麻衣「納得いかないわ!」

蓮 「そうえば、さっき言いかけだったよな。組織と言われたからって、必ずしも刑罰の対象になるとは限らないんだろ」

麻衣「確かにそうね。早合点して、ちょっと興奮しちゃって、恥ずかしいわ。そうよね。普通にしてたら刑罰なんて科されないものね。ほら、現金を渡したりしなければ大丈夫なんでしょ」

さら「ところが、大丈夫とは言えないのよ。ここも曖昧なの」

麻衣「これも曖昧なの?」

さら「金銭だけじゃなくて、『憲法改正の賛否に影響を与えるに足りる物品その他の財産上の利益を与えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」を課されるの。一応、『物品その他の財産上の利益』については、『多数の者に対する意見の表明の手段として通常用いられないものに限る』という限定はついているけれど、これも何が『通常用いられる』意見表明の手段か分からないわ」

蓮 「すまん、何が問題なのかよくわからないから、わかりやすく言ってもらえるか?」

さら「まず、『財産上の利益』って何か不明確よね。前に大臣が、うちわやカレンダーを配ったとして問題になったことを覚えてる?」

麻衣「あー、誰の話だか覚えてないけど、あったような気がする」

さら「うちわもカレンダーも、財産的価値にしたら数百円程度かもしれないわ。でも、財産的価値があるとして、公職選挙法上の寄付にあたるとして問題になったの。つまりその程度の内容でも、罪になる可能性がなるってことなのよ」

麻衣「すると、夏の暑いときだからと、みんなに受け取ってもらえるように、賛成意見や反対意見を書いたうちわを配ったら、アウトってこと?」

さら「おそらくそうね」

蓮 「うちわは、普通、意見表明になんて使わないから、例外にも当たらないってことか」

さら「おそらくそう考えられるでしょうね。それから、ママたちが勉強会をしようって、呼びかけをしたら、来てくれた人に、たいていお茶やお菓子を出すわよね」

麻衣「え、まさかそれも買収って言われちゃうの?」

さら「その可能性は高いと思うの」

麻衣「えー!! お茶とかお菓子って、別に特別なことじゃないでしょ。そんなものじゃ、誰だって買収されないわよ」

さら「私もそう思うんだけど、お茶やお菓子って、意見表明するときに普通は使わないわよね。そうすると、利益供与だって言われるかもしれない。少なくとも、そういう指摘をされる可能性があるわ」

蓮 「なんだか無茶苦茶だな。一方では数千万円とかかかる有料広告が無制限なのに、こんな数百円の話が犯罪になっちゃうのかよ」

麻衣「そうそう。その程度で買収って言われるなんておかしいわよ」

蓮 「こんなことまで犯罪にされたんじゃ、不安で、憲法改正の話なんかできないんじゃないか?」

さら「そうなのよ。こんな小さなことでも刑罰を科されるかもしれない。そうするとみんな萎縮しちゃって、必要以上に自己規制しちゃうでしょ。それが問題なの」

蓮 「なあ、さら。今までの話を聞いていると、憲法改正の国民投票になったら、改正は半分決まったような感じだな。」

麻衣「ホント。イメージ戦略が先行して、ちゃんとした情報は入ってこない。友達と話をするときも、犯罪にならないか気を遣わないといけない。こんなのやってられないわよ」

蓮 「でもさ、そうしたら俺たちはどうやって、話し合ったり、問題点を知ったら良いんだよ」

さら「一番必要なことは、私たちが普段から、政治の話題をタブー視しないことだと思うわ」

麻衣「どういうこと?」

さら「今って政治の話をすることが余りないわよね。選挙があっても、例えば同僚と、政党や政策について話す機会はあまりないと思うわ。それに家族でもなかなか話題にしづらいわよね。でも、自分たちの生活に直接関係があることなのだから、日頃からみんなで話すように出来たら良いと思うの。そうしたら、一人が問題点に気がつけば、みんなも問題があると分かるでしょ。そうやって、輪を広げているいくしか無いと思うの」

麻衣「なるほどね。普段から政治ついて話が出来れば、憲法改正の話も出来るはずだもんね。政治の話をすることは市民の当然の権利だって考えて、みんなが普段から行っていたら、警察も問題だって言いにくいってことよね」

蓮 「でもさ、政治の話って、何か話題にしづらいんだよな」

麻衣「そうよね。でも何で言い出しにくいのかしら」

さら「理由は私にもよく分からないわ。でも、このままだと参議院選と同じように、問題点に気がつかない人が多い状況が変えられない気がするの」

麻衣「そうね。何とか出来るかしら」

蓮 「出来る、かな?」

さら「出来ることから始めるしかないと思うわ。今の政治に不安を持っている人は多いと思うの。だから、生活の不安をきっかけに、政治に興味を持つことは、生活を守ることにも繋がると分かってもらえないかしら」

蓮 「政治に興味を持つことが、生活を守るか。そうかもしれないな」

麻衣「政治も、憲法も、ちゃんと意識しないとダメって事だよね。あたし、今まで何も考えてなかったからなぁ」

蓮 「俺もそうだよ」

さら「今からでも遅くは無いわよ。みんなで一緒に考えましょう」

麻衣「そうね。よろしく」

さら「こちらこそよろしくね。・・・・・・・あれ、揺れてる?」

蓮 「大きいぞ!」

麻衣「きゃ〜!!」

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?へつづく・・・

憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?
憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで

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