憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10

国会議員の任期延長?

前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ

登場人物
 さら
 まこと
 麻衣(まい)
 蓮(れん) 
 店長

蓮 「ちなみに、本当に緊急事態条項が改憲の議題になるのか?」

まこと「それはわからないよ。一番可能性があるのは、国家議員の任期の延長だって言われているし」

蓮 「任期を延長してどうするんだ?」

まこと「一応理由としては、衆議院の解散や任期満了後、選挙前に大災害が起きたら、選挙ができなくなってしまう。憲法上は国会議員の任期延長が認められないから、違憲となる。それは問題だから、任期を延長できるようにしましょう。ってことだ」

蓮 「その説明を聞くと、任期延長は必要に思えるけど。違うのか?」

まこと「必要性についても異論があるけど、問題はそっちじゃなくて、選挙がなくなる可能性があるって事さ」

蓮 「また、無茶苦茶な話になってきたな。どうしてそんな話になるのか、さっぱりわからんぞ」

まこと「当たり前の話だけど、災害っていつまで続くか分からないよね」

蓮 「まあ、そりゃわからないな」

まこと「任期延長の期間が切れたとき、選挙できない状態が続いていたらどうする?」

蓮 「どうするって、どうしようもないだろ」

まこと「そうなっちゃうよね。だから、本当に災害によって選挙が出来ない場合に備えるのであれば、期限は無限定にするか、期限があっても、再延長できないと意味が無い。ってことは、伸ばそうと思えばいつまでも国会議員の任期は伸ばせるってことになっちゃうでしょ」

蓮 「いやいや。災害が終わったら、普通に選挙するだろ」

まこと「でもさ、誰が選挙できる状態だって判断するの?」

蓮 「誰がって、・・・・みんなで、かな」

まこと「いやいやいや、選挙を再開できる状況にあるかを決めるために、国民投票をするって論理矛盾でしょ。ちなみに、自民党改憲草案の内容だと、内閣総理大臣が判断するんだ」

蓮 「なるほど、言いたいことが分かった。災害が起きたのを、これ幸いと、非常事態宣言を唱えて、独裁政権を樹立した。そして、独裁政権を続けるために、国会議員の任期を無期限にしちゃうってことか」

まこと「そういうこと。杞憂だという意見もあるだろうけど、こんな危険があるって事は知っておかないといけないよね」

蓮 「うん。俺は、たぶん気がつかなかったな。マスコミはこんなこと言ってたかな? 後で調べてみよう」

まこと「マスコミだけ見てると、たぶん色々なことに気がつかないままじゃないかという気がする。自分で調べるって、必要なことなんだよな。んじゃ、次は必要性についてだな」

蓮 「よろしく!」

まこと「まずは、衆議院の任期満了の場合には、衆議院の解散と違って、参議院の緊急集会について規定がされていない点をどう考えるかって問題があるんだ。もし、参議院の緊急集会が認められないと、憲法上、緊急時の手当がされてないことになるからね」

蓮 「なるほど。手当がないとしたら、それは、任期延長にするかどうかはともかく、改正する必要があるってことだからな。で、どうなのさ?」

まこと「賛否どちらの意見もあるけど、俺は任期満了の場合も緊急集会が認められると思うよ」

蓮 「なんでそう思うんだ?」

まこと「参議院の緊急集会の趣旨から」

蓮 「それだけじゃわからんって」

まこと「まず参議院の緊急集会の趣旨は、さっきも言ったように、衆議院が解散されて、国会が成立しないときに備えた規定だろ。その必要性は、衆議院の解散と任期満了では何も違いが無い」

蓮 「まあ、そりゃそうだ」

まこと「ということは、普通に考えれば、衆議院の任期満了についても、書いてないとおかしいよね。でも、書いてない。そうすると、何で記載されなかったのかが問題となる。でもさ、解散の場合は緊急時の対応のために規定を設けたのに、衆議院の任期満了については、緊急集会は必要ない、そんなもの無用だ!って規定を敢えて設けなかったとは考えにくいよね」

蓮 「そうだよな。必要性が分かっているのに、そこだけ敢えて規定しないってのはおかしいよな」

まこと「とすると、単なるミスって考えられない?」

蓮 「いやいや、憲法なんて重大なものに、単なるミスって、あり得ないでしょ!」

まこと「と、普通は思うところなんだけど、実は憲法にも、単なるミスってあるんだよね」

蓮 「えー!」

まこと「例えば、憲法22条は「何人も・・・国籍を離脱する自由を侵されない」とあるけど、日本国籍を離脱できるのは、日本国籍保有者だけで、外国籍の人は不可能でしょ。そしたら、「国民は」って書かないとおかしいよね」

蓮 「おお、確かにそうだ。ケアレスミスだな」

まこと「他にもあって、憲法98条に、憲法に違反する法律は無効だという記載があるんだけど、憲法と条約の関係は何も記載されていないんだ」

蓮 「ん? それは何か問題があるの?」

まこと「条約って、外国との取り決めなんだけど、国内に直接効力を持つ条約もあるんだ。憲法に違反する条約が締結された場合に、憲法に違反する条約が無効とならないとすると、憲法改正しなくても、条約締結すれば憲法改正と同じ事になっちゃうでしょ」

蓮 「なるほど、あとで憲法違反だって裁判所で争えないと、憲法より条約が優先されたことと同じって事か」

まこと「そうそう。だから、憲法に違反する条約は無効と明文で規定していないと、問題となるって事。条約の方が憲法より上位だっていう説も根強いくらいだからね」

蓮 「安保条約とか?」

まこと「そのとおり。でも、一応、裁判所は、憲法違反の条約は無効としているはいるんだけど、これは明文がないでしょ。だから、趣旨から考えて、記載漏れを補っているんだ」

蓮 「なるほどなぁ。だから、明文は無いけど、緊急集会の趣旨からしたら、任期満了時についても適用があるはずだと」

まこと「うん。だから任期満了についても、現行のままで問題ないと思うんだよね」

蓮 「ふむふむ。そういう考えができるってことは分かった。でも、それはまことの解釈であって、みんなが同じ解釈をするとは限らないんだろ」

まこと「あはは、その通りなんだよね。このあたりのことを論じている学者の本ってあまり見たこと無いんだよね〜」

蓮 「なーんだ、それじゃダメじゃん」

まこと「ダメとか言わないでよ。趣旨を考えると、こう解釈しても全然おかしくないでしょーが」

蓮 「確かに。筋は通っていると思うよ」

まこと「だからこういう解釈もあるって事さ。もし実際に任期延長が問題になったら、こういう説が普通に出てくると思うんだよね」

蓮 「確かに、あると思うよ」

まこと「ちなみに、衆議院議員の任期満了って、70年の憲法の歴史の中で、1回しかないレアケースなんだ。そんな滅多にない事態に備える必要があるのかとも思うよ」

蓮 「え? そうなんだ。もしかして、実際にはほとんどあり得ないことを、問題視して憲法改正しようってしてるの?」

まこと「うん。任期満了のことを持ち出すのは、実際に意味ない机上の空論なんじゃないかって思うよ。そんなことを考えるんだったら、緊急事態条項が出来たときの危険性を真剣に考えろよって思うな」

蓮 「うん。全くその通りだ」

まこと「ちなみに、任期満了の問題なんだけど、実は解決する裏技があるんだけど、何か分かる?」

蓮 「え、何だろう。任期満了すると問題なんだから、・・・・直前に解散するとか?」

まこと「おー、大正解!」

蓮 「うえぇ! それが正解かよ」

まこと「そうなんだよね。さっきは、任期満了について緊急集会の記載が無いのはおかしいと言っただけど、ちゃんと意味があるという考えもあるんだ。任期満了であれば、きちんとスケジュール管理が出来るので、任期満了前に選挙をして、任期満了と同時に次の議員が就任することが可能。だから緊急集会の規定が設けられなかった、ってことね。でも、選挙期間中に大災害が発生してしまって選挙が出来ない、どうしよう、臨時国会を招集しようにも、もう任期が切れちゃうよー、ってなったときは、さくっと衆議院を解散しちゃえば良いんだよね。そうしたら、参議院の緊急集会が招集できることになる」

蓮 「そんな便宜的な解散ってありなのか?」

まこと「あり。解散に理由なんてないし、任期満了直前に解散しちゃいけないとはどこにも書いていないさ」

蓮 「なるほど。・・・・あれ、ちょっと待って。内閣総理大臣が大けがをしたり死亡した場合は、どうするんだ? 解散なんて出来ないぞ」

まこと「あのさ、その場合って、緊急事態条項を設けたとして、誰が指揮監督するんだ?」

蓮 「そっか、それも内閣総理大臣がいないとダメなのか」

まこと「そういうこと。緊急事態条項が有効に機能するには、最低でも内閣総理大臣と官僚組織が無事であることが前提だと思うんだよね。ちなみに、内閣総理大臣が欠けた場合は、内閣総辞職することになっているんだ。んでもって、予め指定する国務大臣が内閣総理大臣の権限を代行する。そのため、緊急事態条項についても代行できると考えることも出来るんだけど、国会の指名を受けていない、総辞職した内閣の、しかも臨時の国務大臣が、人権の停止までできちゃうというのは、無理筋だと思うんだよね」

蓮 「確かに、臨時の臨時って感じだもんな」

まこと「うん。だから、内閣総理大臣が無事である必要があると思う。それから、実際に法案作成能力や執行能力があるのは官僚組織だから、官僚が壊滅していると何も出来ない。そのため、官僚組織の大部分が無事である必要があると思うんだ。でも、官僚組織が無事であるって、どんな状態だと思う?」

蓮 「あ、そんな状態にあるんだったら、国会議員も無事だろうから、別に内閣が独裁的権限を持たなくても、国会を開いて、対処できるって事か」

まこと「と、思うんだな。あと、憲法改正をするにしても、任期を伸ばす必要は無くて、『任期満了後、選挙が出来ない事態が生じた場合に、緊急集会の招集が出来る』とすれば足りるんじゃないか?」

蓮 「確かに、それもありだな」

まこと「それからさ、災害対策を言うのなら、緊急事態条項を設ける前にもっとやるべきことがあると思うんだよね」

蓮 「例えば?」

さら「た〜と〜え〜ば〜、身近なところで言えば、自宅の家具の固定、水・食料の備蓄、現実的な避難計画を立てて避難訓練をするとか、事前準備が大切って事よね」

まこと「おいおい、急に出てきて、人の台詞をとるなよなー」

さら「さっきのお返しよーだ」

憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで につづく・・・

憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?
憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで

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