離婚後共同親権について(4) 「実子誘拐」「連れ去り」という言葉について
離婚後共同親権において、「実子誘拐」「連れ去り」という言葉が用いられる場合があります。
しかし、「実子誘拐」「連れ去り」という言葉は、日本の社会実態を無視した、一方的な見方です。
日本の法制度だと、行政や司法が介入できるDVは暴力のみです。
暴力を振るっていないからDVではないと考える人が多いのが、日本の社会の実情です。
また日本では、DV加害者に、強制的に加害者プログラムを受けさせることは出来ません。
婚姻継続を望みながら、DV被害を減らすための政策が、用意されていないのです。
このような状況ですから、精神的DV、性的DV、また身体的DVであっても、別居するしかか選択肢がありません。
その場合に、子を置いていくという選択肢は難しいのが現状です。
なお、何も言わずに出て行ったという話があります。
しかし、DVがある状況では、別居したいと話し合いをしようとする環境にありません。
出て行くそぶりを見せれば、激高され、DV加害がひどくなることがあるためです。
その場合に、子を置いていくという選択肢は難しいのが現状です。
日本は、家事育児は女性の役割という意識が強い社会です。
もし、子どもを置いていけば、子育て放棄だ、児童虐待だといわれるでしょう。
子を連れて行っても、子を置いていっても、女性は同じ言葉で非難されるのです。
それならば、子どもの命を守れる、子連れ別居を選択することに、合理性が認められます。
但し、子をほとんど養育してない者が、子どもを連れて別居した場合は、早急に対応する必要があります。
すぐに弁護士に依頼して、対応を協議する必要があります。
なお、日本は、家庭を犠牲にして仕事をすることが正しいとされる社会です。
長時間労働が当たり前で、子どもが病気だからと仕事を休むと、評価が下がることがあります。
日本では、男性が、女性よりも、労働者として高く評価され、賃金も高い傾向にあります。
そのため、共働きでも、男性は仕事を休むことは許されず、女性が仕事を休む傾向にあります。
このような社会であるため、実際に育児を担っている事は女性です。
日本では、男性は育児をしないからといって、非難されることはあまりありません。
今の日本には、共同養育の精神がないのです。
婚姻中に共同養育が出来なかったにもかかわらず、離婚後に共同したいと言っても無理があります。
また、離婚後の共同養育については、民法766条があるため、合意できる範囲での共同養育は日本では既に法制度化されています。
単独親権は、親権がない親も、親であることは否定されません。
親権以外の親子関係は残っています。 単独親権下でも、子どものために話し合いが出来る関係であれば、共同親権と同じ事が出来ています。
離婚後共同親権の問題は、離婚後に共同できない人たちに、共同を強制することになります。
現行法制度で共同して子育てが出来ている家庭には、 共同親権はメリットがありません。
一方で、共同できない家庭の子どもにとって、デメリットしかありません。
特に、DV加害者にとっては、共同親権は絶好の口実となるという、大きな危険性があります、
初めに述べたように、日本では、DV被害者は逃げるしか手段がなかったことを思い出してください。
共同親権になると、子どもを人質に取られたも同然で、逃げることが不可能になってしまいます。
強制的に共同親権とする制度は、メリットが少なく、デメリットが大きい制度なのです。