9月議会における「酒々井町議会議員の選挙における選挙運動の公費負担に関する条例(議案第1号)」の否決について

1.はじめに
 9月議会において、選挙カーやビラなど候補者の選挙運動費用を各自治体が負担する「公費負担制度」導入に向けた条例案が、賛成3、反対11で否決されました。これは千葉県では唯一のことであり、千葉日報や千葉テレビで報道されました。この件については取材を受けましたし、何件かお問い合わせも頂いております。

【千葉日報】 選挙の公費負担「必要なし」 酒々井町議会、県内唯一の異例判断 乱立懸念、現職有利?統一選に影響も

選挙カーやビラなど候補者の選挙運動費用を各自治体が負担する「公費負担制度」を巡り、酒々井町議会が同制度導入に向けた条例案を否決したことが、21日までに分かった。地方選挙で同制度の対象は都道府県や市などに限られてきたが、2020年6月に公選法が改正され町村でも導入が可能に。県内町村で次々と導入の条例が成立する中、同町議会の判断は異例。来年4月の統一地方選では五つの町で議員選が予定されており、酒々井町のみが「自費負担」選挙となる可能性が高まった。

千葉日報 選挙の公費負担「必要なし」 酒々井町議会、県内唯一の異例判断 乱立懸念、現職有利?統一選に影響も


反対した一人として、今回の条例案に反対した理由を、詳しくご報告致します。


2.条例案の内容
 今回の条例案は、15万円供託金を支払う代わりに、選挙公営制度が拡大された、2020年12月12日に改正された公職選挙法が施行されたことに乗っ取ったものです。なお、同法改正により、町村選挙における選挙期間中のチラシ配布も解禁されました。
 選挙運動費用の公費負担制度とは、公正な選挙を実現するとともに、資産の多少にかかわらず立候補や選挙運動の機会を持てるようにするため、候補者の選挙運動費用の一部について、公費で負担する制度です。具体的には、下記について公費負担になるという条例案でした。

 なお、供託金は、当選若しくは一定以上の結果を残した場合には返還されますが、得票数が供託物没収点(※)に達しない場合は没収されます。

※ 供託物没収点
「有効投票の総数÷議員の定数(16人)×1/10」以下の得票の場合は、供託金がっぼっしゅうされます。
2019年酒々井町議会議員選挙の結果を例とすると、有効得票が8173票でしたので、
      8173÷16×1/10 = 51.08   
51票以下の場合は供託金が没取されることとなります。

3,反対した理由について
 まず、公費負担制度自体には賛成です。例えば、公営掲示板にポスターは、有権者の判断材料として全員共通であるため、公費負担は必要だと考えています。また、チラシも、政策を訴えるために必要だと思います。問題は、何を公費負担して、何を自費負担とするか、またその金額が妥当なのかという点です。

① 選挙カーも公費負担の対象となっていること
 私が一番の問題としたのは、選挙カーを公費負担する必要があるかという点でした。
 酒々井町では、当選者全員が選挙カーを利用してわけではありません。自転車を利用して当選した議員もいるなど、選挙活動のスタイルは様々です。特定の方法を使った人のみ補助が出るというのは、問題があると思います。 
 総務省に確認したところ、町村部で公費負担を導入している自治体数は、選挙カー 756、チラシ 752、ポスター 760とのことでした。多くの自治体は横並びですが、公費負担とすべきものを選択している自治体もあります。酒々井町において、選挙カーを公費負担とすべきなのか、議論が必要だと思います。 

② 議会への意見照会がなかったこと
 議員の選挙に関する内容なのに、事前に議会の意見を聞くことなく、いきなり条例案が提出されたことも大きな問題だと思います。
 これは、今回に限ったことではありません。昨年の12月議会には、議員の資産公開に関するものが、本年3月議会では、議員控え室を特定の課が使うことを前提とした条例改正案が出されました。これらは、いずれも否決されました。この傾向は、執行部による議会軽視の表れだと思います。議員に関する条例を出す際は、まず議会に意見照会するという慣例を付けて欲しいと思います。
 そして、議員同士で、今までどういう選挙活動をしてきたのか、これからの選挙はどうあるべきかなどを協議し、その結果に基づいて条例案を作成すべきだと思います。

③ 公費負担の上限金額を再考すべきこと
 公費負担とする上限金額についても、考える余地があります。例えば、条例案では、選挙カーの上限金額が、ハイヤー方式は322,500円、個別方式は181,500円と大きな金額の違いがあります。この差を設けることは合理性があるのでしょうか。この点について、広島県内の町村や山口県の一部の町村では、どちらの方式でも上限を約18万円として、方式による金額差をなくしています。

【中日新聞】町村長・議員選、公費で経費負担 広島・山口12町議会で条例案可決 なり手確保へ期待の声


 今までは、各候補は、いかにお金をかけないで選挙をするかに知恵を絞っていたと思います。ところが公費が出るとなると、高くてもいいやと考えてしまい、自分で工夫せずに、全てを業者に丸投げする候補者も出るかもしれません。
  町の予算は、より多くの住民サービスが可能となるように、質を保ちながらも、なるべく安くするように求められています。選挙運動の公費負担においても、同じように考えるべきです。お金のかかる選挙にならないように、合理性のある上限金額を出す必要があると思います。


④ 大きな予算がかかること
  今回の議案による公費負担について、20名が立候補した場合は、約1360万円の予算になると説明がありました。これは国や県の補助がないため、全額町の持ち出しです。大きな費用負担になります。


⑤ 騒音問題が発生する可能性があること 選挙カーが公費負担になると、候補者全員が選挙カーを使用すると考えられます。狭い町内を20代もの選挙カーが行き交うのですから、一日中絶え間なく選挙カーの声が聞こえるという騒音問題が発生する可能性があります。この点については、議会中に、町民の方からご意見を頂きました。


4,条例案否決後の議論について
  私は、公費負担について、今までの行われてきた選挙活動を踏まえて議員間で議論し、その結果に基づいて条例案を作成し、12月議会に上程することで、来年の選挙に間に合わせるべきだと考えていました。
  9月議会最終日に、同じ考えの同僚議員から、公費負担について話し合いの場を設けようという提案がなされました。しかし、過半数を超える議員が現行のままで良いという意思を示したため、提案は否決されました。これにより来年の選挙までに条例が成立することはなくなったと思います。
  正直なところ、これは誤算でした。当然、公費負担の議論がされると思っていただけに、見通しが甘かったと言わざるを得ません。来年の選挙は、全国的にも稀な、公費負担のない選挙になります。

5,町長選挙に関する公費負担について

下の表を見れば分かるように、千葉県における他の自治体は、町村長選挙と議員の選挙の公費負担について、いずれも導入しています。しかも、一つの条例として制定されています。

ところが、今回提出された条例案は、議員に関するもののみでした。
 選挙運動における公費負担の議論は、議員だけではなく、町長選挙においても必要です。今回、議員だけになった経緯は明らかでありません。
 町長選挙に関する内容が含まれなかったのは、町長選挙においては、公費負担をしないとう方針なのかもしれませんが、こちらも今後の課題となると思います。
 もしかしたら、町長選挙に関する内容を含む条例案だった場合に、結果が変わったかもしれません。

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