離婚後共同親権について(1)
離婚後共同親権について、中間試案が出される状況になりました。
「法務省は離婚した父母の双方が親権を持ち続けることを可能にする法改正を法制審議会(法相の諮問機関)に提案する。法制審が8月をメドにまとめる中間試案に盛り込む見通しだ。現行法の維持などと合わせた選択肢のひとつとして記す。」
日経新聞 離婚後の共同親権を提案へ 法務省、法制審に
離婚後共同親権は、離婚後子どもと会えない、単独親権は親子断絶だ、海外の法制度に習うべきだなどという理由から、日本でも導入すべきという意見が出てきました。
今回の中間試案は、これらの意見をきっかけにされたのだと思います。
しかし、離婚後親子が会えないのは、単独親権の問題ではなく、面会交流の問題です。
また単独親権でも親子関係は続いており、相続権、養育費支払い義務、扶養義務、近親婚の禁止など、親子関係に基づく法的効果は残っています。
そして、海外の共同親権を導入すべきだという意見については、海外は共同養育を基本としており、日本でいう親権が共同で行われることではないという点が無視されています。また、離婚後共同親権を導入したことにより弊害が顕著になり、揺り戻しの状況にあることも念頭に置いて議論する必要があります。
また、現行の単独親権は、離婚後も共同で相談して親権を行使することを禁止していません。そのため、離婚後も事実上の共同親権行使が行われいる家族もあります。
これに対し、離婚後の両親が、顔を合わせることや意見交換することすら困難な場合に、離婚後共同親権を導入すれば、子どものための意思決定が困難になります。
更に、DVや児童虐待のある事例については、そもそも子どものために親権を行使するつもりはなく、元配偶者や子どもを支配下に戻すための武器として、共同親権が濫用されるおそれがあります。
ついでに言えば、海外ではDVは精神的、経済的、性的なものなど多様な支配関係が刑罰の威嚇の下で禁止されているのに対し、日本では、身体的な暴行を伴う場合のみ禁止されています。
また、養育費についても、他国では、国や自治体が養育費の立て替え制度を導入したり、不払いについては行政罰・刑事罰などで支払いを強制する制度を取っています。
このように、弱い立場に置かれた配偶者や子どもに対する保護が薄い日本で、離婚後共同親権を導入することは、離婚後もDVや児童虐待が続く可能性が高いと思います。
簡単にまとめると
- 面会交流、養育費の支払いは、離婚後共同親権の議論とは関係ないこと
- 単独親権下でも、重要事項に関する情報提供や共同意思決定をするという当事者合意が可能なこと
- 共同親権だと、親の意見が対立した場合に、迅速な決定が出来なくなり、子どもに実害が生じる可能性が高いこと
- 共同親権があることを武器として、無理難題を突きつけられる可能性があること
- DV、児童虐待について弱い立場を守るための法制度が脆弱であるため、離婚後も支配のために使われるおそれがあること
これらの理由から、私は、離婚後共同親権を導入することには反対の立場です。
今後、離婚後共同親権に反対する理由について、面会交流、養育費、DVなどの問題と絡めながら、少しずつ考えをまとめていきたいと思います。