憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11
デマに流されないで
前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?
登場人物
さら
まこと
麻衣(まい)
蓮(れん)
店長
麻衣「さら、おかえりー。あ、何持ってるのかと思ったら、美味しそうなワインね」
さら「ただいまー。麻衣も飲む?」
麻衣「頂きましょう」
蓮 「げ、向こうのテーブル。ワインが3本も空いてるぞ。おい、さら。飲み過ぎじゃ無いか?」
さら「全然飲み過ぎじゃないですよー」
蓮 「おい、まこと。さら、あんなに飲んでて大丈夫か?」
まこと「大丈夫じゃ無いか? あれくらいいつものことだから」
蓮 「そうなんか!・・・・って、麻衣のペースも速くないか? いきなりボトルが空いたぞ」
まこと「あの二人って、いつもあんな感じだったろ」
蓮 「そういえばそうだったような記憶があるな・・・・。俺は早々に酔いつぶれるから、あまり覚えてないけど。昔から変わってないということか」
さら「こら、そこで、何を、こそこそしゃべってるのかなー」
麻衣「そーそー、あなたたちも飲みなさいよー」
蓮 「じゃあ、はい」
まこと「いただきまーす」
さら「で、さっきの続きだけどー。あのねー、・・・・って何の話だっけ?」
蓮 「おいおい!飲み過ぎて、頭働いてないんじゃないのか?」
さら「大丈夫よ。気合いを入れて・・・・しゃきーん! もうこれで大丈夫」
蓮 「(ひそひそ)なあ、まこと、さらってこういうキャラだっけ?」
まこと「うん、こういうキャラだったよ。めっちゃ酒飲んで、酔っ払っていて言動がおかしいのに、気合いを入れたら、頭が復活する。正直訳分からんが(苦笑)」
さら「何をこそこそしゃべってるの?」
蓮・まこと「何もしゃべってません!」
さら「そう? じゃあ、さっきの続きね・・・、って何の話だっけ?」
麻衣「災害対策のはなしよ〜」
さら「そうそう。あのね、人はね、いざとなったときは、準備した以上のことは、出来ないのよ」
まこと「東日本大震災での釜石の奇跡とか言われるけど、あれは小中学校で適切な避難訓練をしていたから出来たことで、奇跡でもなんでもないもんな」
さら「そうそう。逆に、釜石の悲劇は、本来は津波災害の場合の避難場所では無いところを、避難訓練に使っていたために、大勢の人が避難してきてしまい、津波にのみ込まれて、100人以上が犠牲になってしまったのよね」
まこと「適切な予想に基づく、適切な対応を計画し、適切な訓練をする。それしかないよな」
さら「福島の原発もね、予測不可能じゃなかったのよ。事故の2年以上前に、東電内部で津波対策は不可避だという報告がなされていた。また、政府も、電源喪失になったときのリスクについて、質問されたことがあるの。でも、東電も政府も、何もしないで放置していた。しかも、トラブルが発生したときのことを真剣に考えておらず、対処方法をその場で考えるしかなかった。東日本全体が壊滅しなかったのは、運が良かった以外の何物でも無いのよね」
まこと「それなのに、トラブルが起こってから、内閣総理大臣が全権を任されたからって、何の事前準備もなしに、一体何が出来るのかっつ〜の。魔法使いじゃあるまいし」
麻衣「そうそう。どんなにたくさんワインを飲みたくても、作るのを忘れたら飲めないってことよ〜」
さら「いや、ぜ〜んぜん、ちがうし〜」
麻衣「あはは。てへっ」
蓮 「あ、そうだ。聞こうと思ってて忘れてたんだけど、東日本大震災のときに、憲法のせいで死人が出たって話を聞いたんだけど、そのあたりはどうなんだ?」
まこと「あれ、それってデマだよ」
蓮 「うそなのか?」
さら「そう。人権を守ることで助かる命が救えなかったという話は色々言われているわね。例えば、東日本大震災のとき、燃料不足で救急搬送ができなくて、命が救えなかったっていう話があるわ。でも、実際にそんな事実は確認されていない。それから、報道による検証がなされた結果、ガソリンスタンドと優先提供協定を結んでいたり、店舗側の配慮があったりして、実際には緊急車両がガソリン不足になって被災者を運べなかった例は一件も無かったそうよ。ついでに言うと、今後の対策として、備蓄したガソリンなどを提供できるように法改正したり、石油会社と優先供給協定を結ぶなどの対応策も採られたわ」
蓮 「えっ、そうなのか!? 他にも・・・何だっけ、車が道をふさいで、緊急車両が進めないとか。財産権があるから車とか瓦礫をどけられないんじゃないの?」
さら「瓦礫の撤去や、家の撤去などは、前に説明した公共の福祉による制限で説明できるところね。東日本大震災でも、現行法で対処していたわ。もし法律の使い勝手が悪く、現実に即さないというのであれば、迅速な対応が出来るような法律の改正で対処が可能だし。特に非常時は、緊急にやるべき事が多いため、平常時より強めの制約が可能と考えられるわ」
蓮 「なるほどなぁ。憲法を変えれば救える命があるっているのは、嘘だったんだな」
さら「憲法改正の国民投票のときは、今みたいに、もっともらしい嘘が飛び交うことになるんじゃ無いかと思うの。その場合に、正しい情報が伝わるかが心配だわ」
まこと「イギリスのEU離脱を決める国民投票は、離脱派の嘘の公約が決め手だったとも言うしな」
蓮 「嘘の公約?」
まこと「EU加盟国には負担金があって、離脱をするとその負担が減るから、社会保障に週に約480億円出資できると宣伝していたんだ。それを信じて離脱賛成に投票した人は少なくなかったんだ。でも、離脱が決まってから、間違っていたとして、公約は撤回されたんだ」
さら「離脱反対派が、そんな金額は無理だと正しい主張をしていたけど、浸透しなかったのよね」
まこと「他にも、EU離脱をすれば、移民を拒絶できるという話もあった。でも移民の受け入れは、欧州人権条約によって決まっていることから、EU離脱とは無関係に義務化されていることだったんだ」
さら「様々な嘘がちりばめられた公約を信じた人たちが、離脱賛成に回った結果、離脱が決まった。後から公約が嘘だったと知って、投票のやり直しをしたいと言い出した人が数百万人いたのよね」
まこと「でも、一度決まってしまったことはやり直せない・・・」
さら「正しい情報だけがあって、それを基に冷静な判断をすることが理想的なんだけど、実際には、もっともらしい嘘が流布されるのよね。そしてそれに騙されてしまう・・・」
蓮 「イギリスの離脱賛成派は、嘘だと分かっていて公約にしてたってことか」
まこと「そういうこと」
蓮 「日本でもそうなる可能性は高いって事か?」
まこと「可能性は高いと思うよ。さっきも言ったけど、国会による改正の発議から、早ければ2ヶ月で国民投票が実施されることになっている。イギリスの場合は、国民投票をするとされてから、投票日まで4ヶ月あった。それでも、嘘を排除することは出来なかったんだ。日本も同じような状況になると思うよ」
さら「正確な情報を伝えることは、短時間で出来ることでは無いわ。真偽が分からない情報でも、SNSであっと言う間に拡散してしまう。それに、人は、自分に都合の良い情報を受け入れやすいし、無意識に都合の悪い情報を排除しようとしてしまうので、一度間違った情報を受け入れてしまうと、修正することが難しいのよね」
まこと「生活が苦しく、生活の改善を求めてながら、社会保障を削ることを進めている政権を支持してしまう今の日本が、果たして合理的な判断が出来るかって問題もあるよな」
さら「そうねぇ。どんな処方箋が有効なのか、難しい問題よね」
まこと「それから『お試し改憲』っていう言葉は問題だよな。憲法の改正をお手軽に考えて良い訳ないもんな」
麻衣「試食のケーキはまずかったら作り直しが出来るけど、憲法は一度変えちゃうと、元に戻すことは難しいものね」
さら「そういうことね」
蓮 「まあ、ここで悩んでいても仕方ないさ。ともかく、明るい未来を信じて生きるしかないよな」
まこと「まあ、確かにそうだな」
さら「そうね。ちょっと悲観過ぎだったわね」
麻衣「そうそう。景気づけに、顔を上げて、胸張って、笑顔になって、乾杯しましょ〜♪」
一同「おー」
麻衣「それじゃー。カンパーイ♪」
一同「カンパーイ♪」
(完)
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ