憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5
緊急事態条項ってなに?
前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
登場人物
さら
まこと
麻衣(まい)
蓮(れん)
店長
さら「・・・・」
蓮 「・・・・・・・・」
麻衣「・・・・・・・・・・・・収まった?」
さら「あ〜怖かった」
麻衣「結構揺れたよね」
さら「あっ、紅茶こぼれちゃってる。台ふきもらってくるね」
蓮 「すまねぇ」
麻衣「お願いね」
蓮 「・・・・・しかしさ〜、最近地震多いよな」
麻衣「ホントホント。昔より多いよね」
蓮 「あ、地震速報来た。最大震度5強だって。ここも震度5弱かよ」
麻衣「昔は震度5って、ものすごく大きいって印象だったけど、今は震度5って普通になっちゃったよね」
蓮 「東日本大震災の後、完全に活動期になっちゃってるんじゃないかな」
麻衣「熊本の地震も震度7もあったし、この国ってどうなっちゃうんだろう」
蓮 「地震が起きると、家が倒壊して道をふさいだり、動けなくなった車が放置されて、緊急車両も入れないとか言うじゃん。あれは何とかならないのかな」
麻衣「確かさ、憲法改正しないと対処できないんじゃなかったけ」
蓮 「そうそう、東日本大震災のときは、憲法のせいで死人が出たって聞いたよ」
麻衣「やっぱり、緊急時って、憲法が足かせになるのかな」
蓮 「なるんじゃないの? ほら、財産権とかあるじゃん。道をふさいでても、勝手に家を壊せないし、車とかも勝手に処分できないでしょ」
麻衣「なるほどね。だから迅速な対応が出来ないって事か」
蓮 「そういうことだな。さっきは、憲法改正が危ないみたいな話になったけど、必要な改正もあるってことだよな」
麻衣「うん、よく考えたら当たり前よね。良いものもあれば、悪いものもある。全部悪いなんて決めつけちゃいけないってことね」
蓮 「そういうこと。で、どう憲法改正したら良いんだ?」
麻衣「何だっけ、緊急なんとかが必要って言ってたよね」
蓮 「えっと・・・そうだ、たしか、きんきゅ〜じたいじょ〜こ〜♪」
麻衣「それそれ! って、ドラえもんかよ!」
蓮 「あははは。つい」
麻衣「あはは、まったく、蓮もかわらないなぁ」
蓮 「当たり前だよ。三つ子の魂百までっていうじゃん」
麻衣「昔はよく馬鹿やってたもんね」
蓮 「そうそう、何も考えなくても生きられたあの頃が懐かしいよな」
麻衣「そうね。生きにくい世の中になっちゃったもんね」
蓮 「おっと、それ以上言うと愚痴の言い合いになっちゃうからやめとこう」
麻衣「それもそうね。あれ、そういえば、何の話をしてたんだっけ」
蓮 「だからさ、きんきゅう〜じたいじょ〜こ〜♪」
麻衣「あはは、もうそれはいいってば」
蓮 「いや〜、つい」
麻衣「で、その緊急事態条項ってどんなどんな話だっけ」
蓮 「いや、しらん」
麻衣「って、散々ネタ振っといて、しらないんか!」
蓮 「いや〜。言葉だけは聞いたことあるんだけど。じゃあ、麻衣は知ってるのか?」
麻衣「知ってたら、聞かないってば」
蓮 「確かに」
麻衣「じゃあ、さらが戻ってきたら聞いてみよっか」
蓮 「そうだな。あ、噂をすれば・・・」
さら「ごめん遅くなった。店長ってば、地震にびっくりしてお店の外に飛び出してたもんだから、探しちゃったよ」
麻衣「そうなんだ、店長も慌てん坊だな」
蓮 「いやいや、地震の時は、建物に潰されないように外に飛び出る方が良いとも言うぞ」
麻衣「のんびり屋みたいに見えるけど、意外に、店長は機敏ってことね」
さら「さてと、テーブルも拭き終わったわ。店長、台ふきありがとう。あと、紅茶ももう一杯お願いね」
麻衣「あ、あたしもお替わりお願い」
蓮 「俺は、ブレンドコーヒー追加で」
麻衣「ありがとうね、テーブル拭いてもらって」
さら「ううん、たいしたことないわよ」
蓮 「あ、そうだ。さら、ちょっと良いかな」
さら「ん、なに?」
蓮 「緊急事態条項について聞きたいんだけど」
さら「緊急事態条項? ああ、憲法改正の話の続きね。憲法改正をするなら、緊急事態条項が一番可能性があるんじゃないかって言われるわ。よく『お試し改憲』とか聞くでしょ」
麻衣「お試し改憲?」
蓮 「あー、聞いた覚えたがあるぞ。あれだ、ほら、本当は9条を改正したいんだけど、いきなりやると反発が強いから、憲法改正へのアレルギーを払拭するために、とりあえず一度改憲してみようって、感じで言われてる、あれか」
さら「そうそう」
麻衣「ってことは、緊急事態条項については、必要だからみんな賛成する人が多いってこと?」
さら「私はそうは思わないけど、そう言う人もいるわね」
麻衣「さらは反対なの?」
さら「うん」
麻衣「なんで? 震災とかあったときに、迅速に対応するためには必要だと思うんだけど」
さら「私は必要だと思わないわ。あと、反対の理由は色々あるけど、一番大きな問題は、緊急事態条項が設けられた場合の副作用が大きすぎるということかな」
麻衣「副作用?」
さら「緊急事態条項とは、どういうものだか知ってる?」
麻衣「ううん、わからないから、さらに聞こうかと思って」
さら「緊急事態条項は、簡単に言うと国家緊急権を定めた規定ね」
麻衣「国家緊急権?」
さら「教科書的に言うと、戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、国家権力が、立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限のことなんだけど、意味分かる?」
蓮 「正直、さっぱりわからん」
麻衣「災害が起きたら、私たちのことを国が守ってくれるって事じゃないの?」
さら「違うわ。簡単に言うと、戦争や災害が起きたら、国を守るために、人びとの人権を停止するってことよ」
麻衣「非常事態が起きたら、多少制限されても仕方ないんじゃないの?」
蓮 「そうそう、人権守って国滅ぶじゃ、しょうが無いだろ」
さら「んっと、そうじゃなくて、国は、人びとを守る義務があるでしょ。それが逆になって、人びとを犠牲にしてでも国を守ることになっちゃうの」
蓮 「だからさ、国がなくなっちゃったら、誰も守ってくれなくなっちゃうんだろ。そしたら、多少の犠牲は仕方ないんじゃないか?」
麻衣「うん、私もそう思う。非常事態って、命の危険があるんでしょ。そんなときに人権とか言って、国の行動を制限しちゃうと、かえって危険が増しちゃうんじゃないの?」
さら「人権の歯止めがないと、国はどこまでも暴走しちゃうかもしれないの。だから、歯止めは残しておかないといけないのよ」
蓮 「それって、現実を見てない机上の空論じゃないの?」
麻衣「国の手足を縛った結果、現実の事態に対処できなかったら意味ないわよ」
さら「必要性があるからと言って、何をやっても良いというわけじゃないでしょ。だから、きちんとコントロールできるようにしておかないと」
麻衣「必要なことが出来ない方が問題だと思うわ」
蓮 「そうそう。権力は暴走するからという理由でがんじがらめにして、いざという時に何も出来なかったじゃ本末転倒だろ」
さら「あ〜、なんで分かってもらえないの!!」
まこと「・・・あのさ〜」
麻衣・さら「きゃ!」
蓮 「うぉっ!」
麻衣「・・・なんだ、まことか」
さら「びっくりさせないでよ、も〜」
蓮 「お前がいたこと、すっかり忘れてたよ」
麻衣「あ〜、びっくりした。いったい何やってたのよ」
まこと「ごめんごめん。あれから、色々注文したらこっちのテーブルに乗り切らなくてさ、隣のテーブルに移動して食べてたんだよ」
蓮 「うぉ! 隣のテーブル、お皿で一杯じゃん。お前、一体どれだけ食べたんだよ」
まこと「えへへへ、たくさん♪」
麻衣「まったく」
さら「まことらしいわね」
蓮 「さっきの地震の時は、姿が見えなかったけど、どうしてたんだ」
まこと「あ〜、ほら、テーブルの上のお皿が落ちそうだっただろ。だから、落ちる前に、ササッとお皿を抱えて、テーブルの下に潜って、安全を確保してから、そのまま食べてたよ」
蓮 「おまえ、あの一瞬でそこまで機転を利かせたのか」
麻衣「すごすぎ!」
さら「昔から、食い意地が張ってたものねぇ」
まこと「えへへへへ」
麻衣「いやいや、褒めてないから!」
蓮 「まったく。それはさておき、何を言おうとしてたんだ」
まこと「あ〜、ほら、みんな熱くなってたからさ、かき氷でも食べてクールダウンしないかな〜、って」
さら「そうねぇ」
麻衣「確かに、熱くなってたかも」
蓮 「確かにお前の言うとおりだな」
さら「それじゃぁ、みんなでかき氷食べましょうか♪」
まこと「さんせ〜い」
麻衣「まことも食べるの?」
まこと「当たり前じゃん♪」
蓮 「まったく、お前には敵わんなぁ」
まこと「ということで。店長、かき氷4つね〜」
さら「ついでに、ほうじ茶も4つよろしくね」
麻衣「・・・きたきた。じゃあ、いっただきま〜す」
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項へつづく・・・・
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート1 プロローグ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?
憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで