2025.12.3「戸籍法施行規則の一部を改正する省令案」についてのパブコメを提出しました

離婚後共同親権の施行にむけた戸籍法施行規則のパブコメが募集されています。

本日、締め切りギリギリでしたが、戸籍法施行規則の一部を改正する省令案に対する意見募集https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080335&Mode=0)のパブコメを提出しました。

改正点の概要及び新しい離婚度届け案は以下の通りです

送付したパブコメは以下の通りです。


戸籍法施行規則の一部を改正する省令案に対する意見

1.附録第13号様式(2) 『「離婚後も共同で親権を行使すること又は単独で親権を行使することの意味を理解し、真意に基づいて合意した」ことを確認するチェック欄の追加』について

【意見】

(1) チェック欄の追記には反対である。

(2) DVや児童虐待について説明し、DVや児童虐待がある場合は単独親権にすべきであることや、DVや児童虐待の相談機関ないし通報機関の情報を記載すべきである。

【理由】

(1) 届出は、届出の内容を理解し、真意に基づいて行われることが原則である。従って、真意に反する届出は、たとえ受理されていたとしても無効となる。

 通常の届出は、記載が形式を満たしていれば受理されるため、その届出が、内容を理解していないことや、真意に反していることを、窓口では確認できない。ところが、「離婚後も共同で親権を行使すること又は単独で親権を行使することの意味を理解し、真意に基づいて合意した」ことを確認するチェック欄が設けられた場合は、このチェックがなければ、離婚届の一部の記載は真意に反する届出であり、無効であることが明確になる。故意であれば、虚偽の届出として、戸籍法第134条に基づき刑罰の制裁の対象となる可能性があることからも、申請窓口は届出を受理できないと考えられる。従って、役所の窓口は、内容を理解し、真意に基づいた合意であることの確認をし、チェックするように指導をせざるを得ない。また、チェックがなければ受理されないのであれば、離婚するために、真意に反していてもチェックせざるを得ない。このように、このチェック欄を設けても、真意に基づいた届出であることは担保できない。それどころか、むしろ真実に反する届出を強要させる可能性がある。

 上記弊害を回避するために、チェックが無い届出も受理する運用も考えられる。この場合は、受理されれば、記載内容を一応は有効として扱われる。すなわち、その子の親権は、記載の通りに共同親権・単独親権となり、合意の無効は、後日争うことになる。しかしながら、これはチェック欄がない場合と同じ運用である。従って、この場合であっても、チェック欄を設ける意味はない。

 そもそも、届出は、真意に基づいて行われることが原則であるにも関わらず、このチェック欄が必要という案が出された理由は、DVや児童虐待などがある場合に、真意に反した申請がなされる可能性が無視できないためであると考えられる。

 改正民法第819条第7項は、裁判所が離婚時に親権者を決める際の判断基準として、DVや児童虐待がある場合は必要的単独親権にすることを明記している。DVや児童虐待がある場合は、子の心身に悪影響が生じるため、加害者親から子を切り離すことが、子の利益にかなうためである。これは裁判離婚だけではなく、協議離婚の際にも妥当する。しかしながら、DV、児童虐待がある場合は、父母の力関係に格差があることから、強要、迎合などにより、子の福祉の観点よりも、加害者親の意思が優先される可能性がある。これらの場合は、後日、合意の有効性、共同親権又は単独親権の選択や、父母いずれの単独親権にするかについて争いとなると考えられる。ここで問題となるが、共同親権からの親権者変更の請求があった場合に、家庭裁判所は、共同親権と定めたことに係る協議の経過を考慮するものとされている(改正民法第819条第8項)ことである。通常の届出とは異なり、真意であることを確認するチェック欄があることで、DVや児童虐待といった必要的単独親権となる事由がなかったことの一つの要素とされる可能性がある。

 このような弊害が生じる可能性があることからも、チェック欄は設けるべきではない。

(2) 先に述べたように、DVや児童虐待がある場合は、真意に反する届出がなされる可能性がある。このような場合は、離婚後も子の心身に悪影響が生じるため、早急に子を加害者から切り離すことが大事である。そのために、裁判離婚を選択すれば、単独親権になる可能性が高いことを伝えることで裁判離婚に誘導したり、離婚後に速やかに単独親権への変更申し立てがされるように促す必要がある。また、DVや児童虐待というと、暴力を伴うものであると限定して考える人もいることから、DVや虐待には、精神的、経済的、性的なものもあると伝える必要もある。そこで、離婚当事者に、DVや児童虐待について説明し、DVや児童虐待がある場合は単独親権にすべきであることや、DVや児童虐待の相談機関ないし通報機関について情報提供することが必要であると考える。

2.附録第13号様式(3)『親子交流、監護の分掌及び養育費の分担の取決めの有無を尋ねるチェック欄』について

【意見】

(1) 親子交流の取決めの説明として、「親子交流を行わないと取決めた場合も「親子交流について取決めをしている。」にチェックを付けてください」と記載すべきである。

(2) 親子交流の説明の主語を、「未成年の子と離れて暮らしている親」から「未成年の子」に改め、「未成年の子が、離れて暮らしている親と定期的、継続的に、会って話をしたり(以下略)」との記載にすべきである。

(3) 養育費の説明を、「経済的に自立していない子と同居している親が、子と離れて暮らしている親と同程度またはそれ以上の、安定した生活を営むのに必要な費用の一部」とすべきである。

【理由】

(1) 親子交流は、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」(改正民法第817条の13)が、親子交流をすることが子の利益になるとは限らない。DVや児童虐待の場合などは、子の心身に悪影響が生じないように、子を加害者から切り離すため必要があることから、親子交流をしないことも有力な選択である。ところが、親子交流の取り決めがあるか否かを問うだけでは、親子交流させなければならないと誤解される可能性がある。従って、親子交流を行わない合意をすることも可能である旨を明記すべきである。

(2) 親子交流は、子の権利であり、また親の権利である。しかし、親の権利といえども、目的は子の利益のためであり、主役は子である。従って、親子交流の主語は「未成年の子と離れて暮らしている親」ではなく、「未成年の子」と記載すべきである。

(3) 養育費の説明が、「養育費:経済的に自立していない子(例えば、アルバイト等による収入があっても該当する場合があります)の衣食住に必要な経費、教育費、医療費など。」とされている。「経費」との記載は、養育費を限定的に解釈する余地が生まれる。つまり、養育費の支払いをしたくない親は、衣食住以外の、お小遣い、娯楽費、旅行費などが養育費の範囲に含まれないかのような解釈をして、支払額を減らすと考えられる。また、新たに法定養育費が導入されたが、法定養育費相当額さえ支払えば、養育義務を果たしていると誤解されることも避ける必要がある。これらの点に鑑みれば、特定の費用の実費相当額という矮小化した金額と解釈できる記載はしてはならない。
 改正民法第817条の12第1項は、「父母は、(中略)その子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならない」と明記している。子の養育費支払い義務は、この扶養義務から生じる。すなわち、別居親が負担する養育費は「子が自己と同程度の生活を維持することができる」金額でなければ、親の責務を果たしていないことになる。むしろ、子を思う親の心情からすれば、自らの生活水準を下げてでも、子の生活を良くしたいと考えるであろう。従って、養育費の説明は、「経済的に自立していない子が、子と離れて暮らしている親と同程度またはそれ以上の、安定した生活を営むのに必要な費用の一部」とすることが望ましいと考える。

4.『第57条第1項 (2) 離婚当事者が親権者の定めをしたときは、離婚後も共同で親権を行使すること又は単独で親権を行使することの意味を理解し、真意に基づいて合意した旨』について

【意見】

(1) 記載事項の追記には反対である。

【理由】

1(1)で述べたように、必要性に乏しく、むしろ弊害が生じる可能性があるため。


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