2024.12.25 令和6年度 第5回酒々井町人権教育セミナー「人権問題に関する住民意識調査の結果報告」に参加しました

2024.12.25
令和6年度 第5回酒々井町人権教育セミナー
「人権問題に関する住民意識調査の結果報告」
に参加しました。

講師は以下の3名です

慶応義塾大学 法学部 教授 竹之下弘久氏
「本調査の概要とLGBTQに対する意識」

東京大学 社会科学研究所 准教授 永吉希久子氏
「差別に関する知識と人権意識」

大阪大学大学院 人間科学研究科 准教授 五十嵐彰氏
「実験にもとづく社会調査」

5年に1度行われる、酒々井町の人感に関する住民意識調査の結果報告として、マイノリティに対する差別・偏見とは何かという説明や、今回の調査結果から読み取れるものについて、それぞれの講師から報告がありました。またグループワークとして、今回の調査結果に関することや同和問題について話し合い、最後に発表しました。

今回取り上げられた内容は、同和問題の他に、セクシャルマイノリティ、在日コリアンなどの外国人への差別も含みます。

まず、竹之下弘久氏による「本調査の概要とLGBTQに対する意識」

セクシュアルマイノリティについは、今回初めて人権意識調査に加えられた項目です。
・保守的な「性別役割意識」、「移民への排外意識」がある人は、ない人と比べて「同性婚に反対する割合」が高い
・「セクシュアルマイノリティヘの知識」がある人は、ない人と比べて、同性婚への賛成はあまり変わらないが、「パートナーシップ制度への賛成割合が高いという結果でした。

ここでの結論は、セクシュアルマイノリティに対する理解を高めていくことが、同性婚を制度的に承認する制度の普及や定着にも大きく貢献すると考えられるというものでした。

次いで、永吉希久子氏による「差別に関する知識と人権意識」

「知らないことは偏見の解消に役立つか」というテーマです。
まず、部落差別についての知識をどこから得たかという点について、「差別の歴史」については知識の世代差があり、若い世代は学校の授業やインターネットから知識を得る反面、知らない割合も相対的に高い。一方で、高齢世代はマスメディアや身近な人との会話から知識を得ており、「知らない」割合は低いという結果に。「差別の現状」については、各世代で最も多いのは「知らない」というもの。知識を得る情報源は、歴史とあまり変わらず、若者は授業やインターネット、高齢世代はマスメディアでした。

「知識の有無は、被差別部落出身者への態度に影響するか?」という問い立てについては、「現代型偏見」の有無の調査が行われました。
現代型偏見とは
・平等の必要性を認める一方、被差別集団への偏見や差別の存在を否定
・その集団の置かれた社会的・経済的状況の原因を、努力の欠如など本人/集団に帰属させる
・その集団の要求は、過大な要求であり、政府などからの支援を優遇措置と考える
という考えです。
本当に、あちらこちらの差別問題でよく見かける考えですね。

今回の調査結果から、
・差別の現状について知識がないことは、現代的偏見を強める
・マスメディアや学校の授業で、差別の歴史、現状を伝えることが現代的偏見を低下させる効果がある
・特に、差別の現状についての知識を得ることが重要。
・一方で、インターネットから知識を得ることは、現代的偏見を強めるわけではないが、抑制することもないという。
ということがわかりました。

インターネットについては、能動的に調べることが可能であり、また調べた情報を強化するような情報が寄ってくるため、差別・偏見を抑制する情報に接する人もいれば、差別・偏見を強化する情報に接する人がいるためなのかもしれません。

在日コリアンについても、調査がなされており、在日コリアンヘの差別についても同様の結果がありました。
少し違う点は、部落差別については、付き合いがあることは現代的偏見とあまり相関関係が無いが、在日コリアンについては現代的偏見が低下するという点です。
在日コリアンの問題は、時間の関係で説明が省かれたのですが、この違いはどこから来るのか気になるところです。

ここでの結論は、「「知らないでいる」ことは差別問題の解消にはつながらない」ということでした。

最後に、五十嵐彰氏による「実験にもとづく社会調査」

外国人や被差別部落出身者に対する差別について、どの程度の人が否定な感情を抱いており、どのようにすれば解消することが出来るのかという問題意識から調査が行われました。

調査をした場合に、本心と違い結果が出る場合があります。それは、人々は社会的に望ましい意見や行動を撮るため、紙面調査であっても、本心を隠して、規範に沿った回答をしがちだからです。
この「社会的望ましさバイアス」(だったと思う)を排斥しなければ、本当の結果は出てきません。詳細は省きますが、今回は、リスト実験をすることで、この社会的望ましさバイアスの排斥を試みました。

調査は、二つあり、一つ目が「中国人」と「被部落差別出身者」に対する態度として中国人/被部落差別の居住地域に住んでも構わないという設問を、直接質問とリスト質問とし、その調査結果を比較し、違いを見ました。
その結果は、「同和地区/中国人居住地域でも構わない」と回答した人の割合は3割程度いたが、リスト実験ではほぼ0に近いという結果になり、直接調査では、排外的な意見を隠している傾向が見て取られました。
ただ、本当にゼロなんてあるかなという気がする・・・
五十嵐氏も仰ってました、実験デザインが理想的でないために、結果を鵜呑みにできないとのこと。

一緒に配布された調査結果の抜粋では、同和地区での居住について、「転入した地域が、被差別部落(同和地区)とい
われている地域でも構わない」という結果は、「はい」と答えた人は全体で48.9%、「いいえ」と答えた人が51.1%と、ほぼ半々だったのですが、この結果とどういう統合性があるのかよくわかりません。
私はリスト調査について知識がないので、読み込めないのかもしれません。

五十嵐氏による二つ目の調査が、設問に、周囲の肯定的態度の情報を記載したものと、記載しないものを、それぞれ対照群を分けて回答して貰い、調査結果の比較をして、他者の意見による結果の違いをみるというもの。
これは、違いが無いという結果でした。
他者の意見を見ても、規範的な行動に出るわけではないということなのだろうか。

今回の調査は、あまりうまくいかなかった、という事なのかな?
このあたりはよくわからないのですが、こういう調査手法が初めて聞いたので勉強になりました。

休憩を挟み、グループワーク


小坂町長、齊藤副町長、金塚議員、人権推進室の岩井さんと、いうちょっと濃いグループでした。
各自発言するのですが、僕は発表者になり、メモ取りに謀殺され何も発言できず。
まあ、他のメンバーの発言を聞くだけでも、学びがあるので、それもヨシ。
発言をまとめて発表しました。
いくつか抜き出すと
・部落があるから大変だと言われる
・怖いというイメージがある
・差別は今でも残っている
・言わないと変えられない
・インターネットは悪い情報がいくらでも出るので、ツールによる悪影響が生じやすい
・セミナーに参加すればわかるが、参加しない人、外部の人には伝わらない
・どうやって発信するかが課題

終わってから、何人かと話をしたのですが、今回の内容は難しかったという方が思いのほか多かったです。
ものすごく興味がある内容で、面白かったと思ったのですが、前提知識や人権への意識が違うのかな?
今回取り上げられた、在日コリアンを含む外国人差別、セクシュアルマイノリティは、ずっと取り組んでいるところですし、統計データの取り扱いについては、計算式や読み方はよくわかりませんが、そういう手法があることは知っていたため、理解度が高かったのかも知れません。

「「知らないでいる」ことは差別問題の解消にはつながらない」という命題は正しいと思う

全体を通して「「知らないでいる」ことは差別問題の解消にはつながらない」という命題は正しいと思います。
差別の歴史・実情を伝えることが、差別・偏見の解消に繋がると思います。

これについては、青全司での、朝鮮学校の高校無償化問題に取り組んだことを思い出しました。

全国青年司法書士協議会
2016.09.28 朝鮮高級学校就学支援金及び朝鮮学校補助金についての意見書

この意見書を発出するまでに、勉強会を開き、何度も役員会で意見交換をしました。
朝鮮学校への補助金や支援金の問題を、北朝鮮のミサイルや拉致問題と絡めて、補助金なんか出すべきでは無いという意見もありました。こういう否定的な意見を言えることは、青全司が意見の違いで人格差別などをしない集団であり、また、相手の意見を尊重することを重視した会であることの証左でもあります。


もともと、なんでこの朝鮮学校の問題を取り上げることにしたのかと言えば、自分の中の差別意識を指摘されて、それに気づいたことがきっかけでした。ハードルが高いけど、取り上げないと進まないので、突き進もうと決心した覚えがあります。
もう8年も前のことなんですね。


役員有志で、何度か朝鮮学校への視察も行いました。
また2016年の神奈川での全国研修会では、田中宏先生による「朝鮮学校差別とヘイトスピーチ」の講演で、歴史や差別の現状を学び、帝京大学の大江朋子准教授から、「現代の偏見と差別 共生社会の実現を阻む要素」の講演で、心理学の見地から、差別・偏見の仕組みを学びました。
こうしてみると、今回の人権セミナーで指摘された取組をクリアーしていったことで、理解が進み、役員内での偏見・差別の解消が図られたのでは無いかと思います。
青全司は、今では、朝鮮学校への法教育を行っており、一条校と同じ扱いをしています。
こういう取組が色々出来たら良いなぁと思います。

ただ、同和問題については、主体的に取り組んだことがあまりなかったと思います。
酒々井町の、人権施策推進審議会、人権教育推進協議会では取り組んでいますが、酒々井町内部に止まっており、青全司のような外部での活動はあまりしてきませんでした。
前に他の自治体との議員での意見交換があったときに、同和問題について全く理解が無い人ばかりでした。差別の現状を言っても、あまり伝わりませんでした。
他にも、数年前に、同和地区の人は血が汚れているからと言われたこともあります。
被部落差別は、今でも残っているのですが、知らない人が多いし、もう終わったという人もいます。
改めて、しっかりと学び、発信していく必要があるのだと思いました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です