妊娠葛藤白書 にんしんSOS東京の現場から 2015-2019

妊娠葛藤白書 にんしんSOS東京の現場から 2015-2019(認定NPO法人 ピッコラーレ)」

本書は、日頃、窓口で相談者の声に耳を傾けている相談支援員が、2015年開設当初から2019年12月までの間に「にんしんSOS東京」に寄せられた2,919人の声一つ一つに向き合い、個人が特定されないようにデータを加工・整理・分析し、まとめたものです。(上記HPより)

詳細な分析から、相談者が何に困っているのか、どんな支援が必要なのかが見えてきます。
例えば、

  • 10代が40%、20代が36%と、若者からの相談が多いこと
  • 正確な妊娠に関する知識が乏しい方が少なくないこと
  • 思いがけない妊娠の相談者は、産みたいと考える方が半数近いこと
  • 思いがけない妊娠の相談のうち、DVや相手と連絡が取れないなど相手との関係性に複雑な背景を持つ方が3割近くいること
  • 中絶できない理由として、9割近くが、お金がないことをあげていること
  • 若年ハイリスク考えられる層は、経済的困窮、虐待など複雑な親子関係、ネットカフェで寝泊まりしていたり、知人・泊め男宅に居候するなどなど居場所がない、などの要素が、他の層と比べて突出して多いこと。

などがわかります。

とりあえず、10代への性教育に力を入れることは必須ですね。

妊娠を告げたら連絡が取れなくなるという場合が、望まない妊娠の5%、妊娠判明前から連絡が取れない場合とあわせると約10%くらいあることを考えると、男女の非対称性は明らかですね。
・男性は、逃げれば良い。
・女性は、責任と困難から逃げられない。
妊娠に関しては、男女は対等な関係ではありません。 女性ばかりに負荷がかかっています。
今の社会が、男性目線ばかり反映されている事を考えると、早急に、妊娠当事者である女性の声を生かした社会に変えるべきだと思います。

また、中絶できない理由として、9割近くが、お金がないことをあげています。
日本では、妊娠・出産・育児は、個人の責任とされています。
お金がないから中絶できず、望まぬ出産をせざるを得なかったのに、自己責任だと言われ、全ての責任を背負う社会はおかしすぎます。
このため、10代でも負担なく購入できる、安価な中絶経口薬や緊急避妊薬の薬局での販売を、早急に認めるべきです。

最近になり、経口中絶薬がようやく薬事承認が了承されることなった点は、一歩前進です。
ところが、入院が可能な病院に限られ、中絶が確認されるまで院内での待機が求められ、薬価が5万円、診察料と合わせて10万円などという話も聞こえてきます。
これでは、10代の中絶の手助けになりません。

このハードルは誰のためなのか。
当事者、現場の声を反映した制度にすべきだと思います。

それから、近年、困難を抱える女性支援への支援へが着目され、国も「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」を定めるに至りました。

それから、経済的困窮、虐待など複雑な親子関係、ネットカフェで寝泊まりしていたり、知人・泊め男宅に居候するなどなど居場所がない、などの要素が、他の層と比べて突出して多い、若年ハイリスク層の望まぬ妊娠を減らす対策として、信頼できる居場所を提供することが考えられます。

既に行われている居場所提供の事業としては、Colaboによる新宿でのバスカフェがあります。 ところが、不正会計があったとのデマで批判され、現場でも妨害行為がされるなどの攻撃にさらされ、バスカフェの開催継続が危ぶまれています。
居場所提供という、重要性が明らかな女性支援が、攻撃の対象とされてしまう異常さ。
女性を単なる快楽の相手にし易い状況を温存したいため、困窮する女性を減らす活動を憎んでいるように感じます。
本書の、相談結果の分析を見ると、今の女性たちの置かれている状況、より弱い立場になれば、望まぬ妊娠をしやすく、かつ中絶しにくい状況がよく分かります。 経口中絶薬や、都のColaboへの対応について考える際は、是非とも本書の分析を生かして、当事者のための政策を実現して欲しいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です