憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11

デマに流されないで

前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?

登場人物
 さら
 まこと
 麻衣(まい) 
 蓮(れん) 
 店長

麻衣「さら、おかえりー。あ、何持ってるのかと思ったら、美味しそうなワインね」

さら「ただいまー。麻衣も飲む?」

麻衣「頂きましょう」

蓮 「げ、向こうのテーブル。ワインが3本も空いてるぞ。おい、さら。飲み過ぎじゃ無いか?」

さら「全然飲み過ぎじゃないですよー」

蓮 「おい、まこと。さら、あんなに飲んでて大丈夫か?」

まこと「大丈夫じゃ無いか? あれくらいいつものことだから」

蓮 「そうなんか!・・・・って、麻衣のペースも速くないか? いきなりボトルが空いたぞ」

まこと「あの二人って、いつもあんな感じだったろ」

蓮 「そういえばそうだったような記憶があるな・・・・。俺は早々に酔いつぶれるから、あまり覚えてないけど。昔から変わってないということか」

さら「こら、そこで、何を、こそこそしゃべってるのかなー」

麻衣「そーそー、あなたたちも飲みなさいよー」

蓮 「じゃあ、はい」

まこと「いただきまーす」

さら「で、さっきの続きだけどー。あのねー、・・・・って何の話だっけ?」

蓮 「おいおい!飲み過ぎて、頭働いてないんじゃないのか?」

さら「大丈夫よ。気合いを入れて・・・・しゃきーん! もうこれで大丈夫」

蓮 「(ひそひそ)なあ、まこと、さらってこういうキャラだっけ?」

まこと「うん、こういうキャラだったよ。めっちゃ酒飲んで、酔っ払っていて言動がおかしいのに、気合いを入れたら、頭が復活する。正直訳分からんが(苦笑)」

さら「何をこそこそしゃべってるの?」

蓮・まこと「何もしゃべってません!」

さら「そう? じゃあ、さっきの続きね・・・、って何の話だっけ?」

麻衣「災害対策のはなしよ〜」

さら「そうそう。あのね、人はね、いざとなったときは、準備した以上のことは、出来ないのよ」

まこと「東日本大震災での釜石の奇跡とか言われるけど、あれは小中学校で適切な避難訓練をしていたから出来たことで、奇跡でもなんでもないもんな」

さら「そうそう。逆に、釜石の悲劇は、本来は津波災害の場合の避難場所では無いところを、避難訓練に使っていたために、大勢の人が避難してきてしまい、津波にのみ込まれて、100人以上が犠牲になってしまったのよね」

まこと「適切な予想に基づく、適切な対応を計画し、適切な訓練をする。それしかないよな」

さら「福島の原発もね、予測不可能じゃなかったのよ。事故の2年以上前に、東電内部で津波対策は不可避だという報告がなされていた。また、政府も、電源喪失になったときのリスクについて、質問されたことがあるの。でも、東電も政府も、何もしないで放置していた。しかも、トラブルが発生したときのことを真剣に考えておらず、対処方法をその場で考えるしかなかった。東日本全体が壊滅しなかったのは、運が良かった以外の何物でも無いのよね」

まこと「それなのに、トラブルが起こってから、内閣総理大臣が全権を任されたからって、何の事前準備もなしに、一体何が出来るのかっつ〜の。魔法使いじゃあるまいし」

麻衣「そうそう。どんなにたくさんワインを飲みたくても、作るのを忘れたら飲めないってことよ〜」

さら「いや、ぜ〜んぜん、ちがうし〜」

麻衣「あはは。てへっ」

蓮 「あ、そうだ。聞こうと思ってて忘れてたんだけど、東日本大震災のときに、憲法のせいで死人が出たって話を聞いたんだけど、そのあたりはどうなんだ?」

まこと「あれ、それってデマだよ」

蓮 「うそなのか?」

さら「そう。人権を守ることで助かる命が救えなかったという話は色々言われているわね。例えば、東日本大震災のとき、燃料不足で救急搬送ができなくて、命が救えなかったっていう話があるわ。でも、実際にそんな事実は確認されていない。それから、報道による検証がなされた結果、ガソリンスタンドと優先提供協定を結んでいたり、店舗側の配慮があったりして、実際には緊急車両がガソリン不足になって被災者を運べなかった例は一件も無かったそうよ。ついでに言うと、今後の対策として、備蓄したガソリンなどを提供できるように法改正したり、石油会社と優先供給協定を結ぶなどの対応策も採られたわ」

蓮 「えっ、そうなのか!? 他にも・・・何だっけ、車が道をふさいで、緊急車両が進めないとか。財産権があるから車とか瓦礫をどけられないんじゃないの?」

さら「瓦礫の撤去や、家の撤去などは、前に説明した公共の福祉による制限で説明できるところね。東日本大震災でも、現行法で対処していたわ。もし法律の使い勝手が悪く、現実に即さないというのであれば、迅速な対応が出来るような法律の改正で対処が可能だし。特に非常時は、緊急にやるべき事が多いため、平常時より強めの制約が可能と考えられるわ」

蓮 「なるほどなぁ。憲法を変えれば救える命があるっているのは、嘘だったんだな」

さら「憲法改正の国民投票のときは、今みたいに、もっともらしい嘘が飛び交うことになるんじゃ無いかと思うの。その場合に、正しい情報が伝わるかが心配だわ」

まこと「イギリスのEU離脱を決める国民投票は、離脱派の嘘の公約が決め手だったとも言うしな」

蓮 「嘘の公約?」

まこと「EU加盟国には負担金があって、離脱をするとその負担が減るから、社会保障に週に約480億円出資できると宣伝していたんだ。それを信じて離脱賛成に投票した人は少なくなかったんだ。でも、離脱が決まってから、間違っていたとして、公約は撤回されたんだ」

さら「離脱反対派が、そんな金額は無理だと正しい主張をしていたけど、浸透しなかったのよね」

まこと「他にも、EU離脱をすれば、移民を拒絶できるという話もあった。でも移民の受け入れは、欧州人権条約によって決まっていることから、EU離脱とは無関係に義務化されていることだったんだ」

さら「様々な嘘がちりばめられた公約を信じた人たちが、離脱賛成に回った結果、離脱が決まった。後から公約が嘘だったと知って、投票のやり直しをしたいと言い出した人が数百万人いたのよね」

まこと「でも、一度決まってしまったことはやり直せない・・・」

さら「正しい情報だけがあって、それを基に冷静な判断をすることが理想的なんだけど、実際には、もっともらしい嘘が流布されるのよね。そしてそれに騙されてしまう・・・」

蓮 「イギリスの離脱賛成派は、嘘だと分かっていて公約にしてたってことか」

まこと「そういうこと」

蓮 「日本でもそうなる可能性は高いって事か?」

まこと「可能性は高いと思うよ。さっきも言ったけど、国会による改正の発議から、早ければ2ヶ月で国民投票が実施されることになっている。イギリスの場合は、国民投票をするとされてから、投票日まで4ヶ月あった。それでも、嘘を排除することは出来なかったんだ。日本も同じような状況になると思うよ」

さら「正確な情報を伝えることは、短時間で出来ることでは無いわ。真偽が分からない情報でも、SNSであっと言う間に拡散してしまう。それに、人は、自分に都合の良い情報を受け入れやすいし、無意識に都合の悪い情報を排除しようとしてしまうので、一度間違った情報を受け入れてしまうと、修正することが難しいのよね」

まこと「生活が苦しく、生活の改善を求めてながら、社会保障を削ることを進めている政権を支持してしまう今の日本が、果たして合理的な判断が出来るかって問題もあるよな」

さら「そうねぇ。どんな処方箋が有効なのか、難しい問題よね」

まこと「それから『お試し改憲』っていう言葉は問題だよな。憲法の改正をお手軽に考えて良い訳ないもんな」

麻衣「試食のケーキはまずかったら作り直しが出来るけど、憲法は一度変えちゃうと、元に戻すことは難しいものね」

さら「そういうことね」

蓮 「まあ、ここで悩んでいても仕方ないさ。ともかく、明るい未来を信じて生きるしかないよな」

まこと「まあ、確かにそうだな」

さら「そうね。ちょっと悲観過ぎだったわね」

麻衣「そうそう。景気づけに、顔を上げて、胸張って、笑顔になって、乾杯しましょ〜♪」

一同「おー」

麻衣「それじゃー。カンパーイ♪」

一同「カンパーイ♪」

(完)

憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?

憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10

国会議員の任期延長?

前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ

登場人物
 さら
 まこと
 麻衣(まい)
 蓮(れん) 
 店長

蓮 「ちなみに、本当に緊急事態条項が改憲の議題になるのか?」

まこと「それはわからないよ。一番可能性があるのは、国家議員の任期の延長だって言われているし」

蓮 「任期を延長してどうするんだ?」

まこと「一応理由としては、衆議院の解散や任期満了後、選挙前に大災害が起きたら、選挙ができなくなってしまう。憲法上は国会議員の任期延長が認められないから、違憲となる。それは問題だから、任期を延長できるようにしましょう。ってことだ」

蓮 「その説明を聞くと、任期延長は必要に思えるけど。違うのか?」

まこと「必要性についても異論があるけど、問題はそっちじゃなくて、選挙がなくなる可能性があるって事さ」

蓮 「また、無茶苦茶な話になってきたな。どうしてそんな話になるのか、さっぱりわからんぞ」

まこと「当たり前の話だけど、災害っていつまで続くか分からないよね」

蓮 「まあ、そりゃわからないな」

まこと「任期延長の期間が切れたとき、選挙できない状態が続いていたらどうする?」

蓮 「どうするって、どうしようもないだろ」

まこと「そうなっちゃうよね。だから、本当に災害によって選挙が出来ない場合に備えるのであれば、期限は無限定にするか、期限があっても、再延長できないと意味が無い。ってことは、伸ばそうと思えばいつまでも国会議員の任期は伸ばせるってことになっちゃうでしょ」

蓮 「いやいや。災害が終わったら、普通に選挙するだろ」

まこと「でもさ、誰が選挙できる状態だって判断するの?」

蓮 「誰がって、・・・・みんなで、かな」

まこと「いやいやいや、選挙を再開できる状況にあるかを決めるために、国民投票をするって論理矛盾でしょ。ちなみに、自民党改憲草案の内容だと、内閣総理大臣が判断するんだ」

蓮 「なるほど、言いたいことが分かった。災害が起きたのを、これ幸いと、非常事態宣言を唱えて、独裁政権を樹立した。そして、独裁政権を続けるために、国会議員の任期を無期限にしちゃうってことか」

まこと「そういうこと。杞憂だという意見もあるだろうけど、こんな危険があるって事は知っておかないといけないよね」

蓮 「うん。俺は、たぶん気がつかなかったな。マスコミはこんなこと言ってたかな? 後で調べてみよう」

まこと「マスコミだけ見てると、たぶん色々なことに気がつかないままじゃないかという気がする。自分で調べるって、必要なことなんだよな。んじゃ、次は必要性についてだな」

蓮 「よろしく!」

まこと「まずは、衆議院の任期満了の場合には、衆議院の解散と違って、参議院の緊急集会について規定がされていない点をどう考えるかって問題があるんだ。もし、参議院の緊急集会が認められないと、憲法上、緊急時の手当がされてないことになるからね」

蓮 「なるほど。手当がないとしたら、それは、任期延長にするかどうかはともかく、改正する必要があるってことだからな。で、どうなのさ?」

まこと「賛否どちらの意見もあるけど、俺は任期満了の場合も緊急集会が認められると思うよ」

蓮 「なんでそう思うんだ?」

まこと「参議院の緊急集会の趣旨から」

蓮 「それだけじゃわからんって」

まこと「まず参議院の緊急集会の趣旨は、さっきも言ったように、衆議院が解散されて、国会が成立しないときに備えた規定だろ。その必要性は、衆議院の解散と任期満了では何も違いが無い」

蓮 「まあ、そりゃそうだ」

まこと「ということは、普通に考えれば、衆議院の任期満了についても、書いてないとおかしいよね。でも、書いてない。そうすると、何で記載されなかったのかが問題となる。でもさ、解散の場合は緊急時の対応のために規定を設けたのに、衆議院の任期満了については、緊急集会は必要ない、そんなもの無用だ!って規定を敢えて設けなかったとは考えにくいよね」

蓮 「そうだよな。必要性が分かっているのに、そこだけ敢えて規定しないってのはおかしいよな」

まこと「とすると、単なるミスって考えられない?」

蓮 「いやいや、憲法なんて重大なものに、単なるミスって、あり得ないでしょ!」

まこと「と、普通は思うところなんだけど、実は憲法にも、単なるミスってあるんだよね」

蓮 「えー!」

まこと「例えば、憲法22条は「何人も・・・国籍を離脱する自由を侵されない」とあるけど、日本国籍を離脱できるのは、日本国籍保有者だけで、外国籍の人は不可能でしょ。そしたら、「国民は」って書かないとおかしいよね」

蓮 「おお、確かにそうだ。ケアレスミスだな」

まこと「他にもあって、憲法98条に、憲法に違反する法律は無効だという記載があるんだけど、憲法と条約の関係は何も記載されていないんだ」

蓮 「ん? それは何か問題があるの?」

まこと「条約って、外国との取り決めなんだけど、国内に直接効力を持つ条約もあるんだ。憲法に違反する条約が締結された場合に、憲法に違反する条約が無効とならないとすると、憲法改正しなくても、条約締結すれば憲法改正と同じ事になっちゃうでしょ」

蓮 「なるほど、あとで憲法違反だって裁判所で争えないと、憲法より条約が優先されたことと同じって事か」

まこと「そうそう。だから、憲法に違反する条約は無効と明文で規定していないと、問題となるって事。条約の方が憲法より上位だっていう説も根強いくらいだからね」

蓮 「安保条約とか?」

まこと「そのとおり。でも、一応、裁判所は、憲法違反の条約は無効としているはいるんだけど、これは明文がないでしょ。だから、趣旨から考えて、記載漏れを補っているんだ」

蓮 「なるほどなぁ。だから、明文は無いけど、緊急集会の趣旨からしたら、任期満了時についても適用があるはずだと」

まこと「うん。だから任期満了についても、現行のままで問題ないと思うんだよね」

蓮 「ふむふむ。そういう考えができるってことは分かった。でも、それはまことの解釈であって、みんなが同じ解釈をするとは限らないんだろ」

まこと「あはは、その通りなんだよね。このあたりのことを論じている学者の本ってあまり見たこと無いんだよね〜」

蓮 「なーんだ、それじゃダメじゃん」

まこと「ダメとか言わないでよ。趣旨を考えると、こう解釈しても全然おかしくないでしょーが」

蓮 「確かに。筋は通っていると思うよ」

まこと「だからこういう解釈もあるって事さ。もし実際に任期延長が問題になったら、こういう説が普通に出てくると思うんだよね」

蓮 「確かに、あると思うよ」

まこと「ちなみに、衆議院議員の任期満了って、70年の憲法の歴史の中で、1回しかないレアケースなんだ。そんな滅多にない事態に備える必要があるのかとも思うよ」

蓮 「え? そうなんだ。もしかして、実際にはほとんどあり得ないことを、問題視して憲法改正しようってしてるの?」

まこと「うん。任期満了のことを持ち出すのは、実際に意味ない机上の空論なんじゃないかって思うよ。そんなことを考えるんだったら、緊急事態条項が出来たときの危険性を真剣に考えろよって思うな」

蓮 「うん。全くその通りだ」

まこと「ちなみに、任期満了の問題なんだけど、実は解決する裏技があるんだけど、何か分かる?」

蓮 「え、何だろう。任期満了すると問題なんだから、・・・・直前に解散するとか?」

まこと「おー、大正解!」

蓮 「うえぇ! それが正解かよ」

まこと「そうなんだよね。さっきは、任期満了について緊急集会の記載が無いのはおかしいと言っただけど、ちゃんと意味があるという考えもあるんだ。任期満了であれば、きちんとスケジュール管理が出来るので、任期満了前に選挙をして、任期満了と同時に次の議員が就任することが可能。だから緊急集会の規定が設けられなかった、ってことね。でも、選挙期間中に大災害が発生してしまって選挙が出来ない、どうしよう、臨時国会を招集しようにも、もう任期が切れちゃうよー、ってなったときは、さくっと衆議院を解散しちゃえば良いんだよね。そうしたら、参議院の緊急集会が招集できることになる」

蓮 「そんな便宜的な解散ってありなのか?」

まこと「あり。解散に理由なんてないし、任期満了直前に解散しちゃいけないとはどこにも書いていないさ」

蓮 「なるほど。・・・・あれ、ちょっと待って。内閣総理大臣が大けがをしたり死亡した場合は、どうするんだ? 解散なんて出来ないぞ」

まこと「あのさ、その場合って、緊急事態条項を設けたとして、誰が指揮監督するんだ?」

蓮 「そっか、それも内閣総理大臣がいないとダメなのか」

まこと「そういうこと。緊急事態条項が有効に機能するには、最低でも内閣総理大臣と官僚組織が無事であることが前提だと思うんだよね。ちなみに、内閣総理大臣が欠けた場合は、内閣総辞職することになっているんだ。んでもって、予め指定する国務大臣が内閣総理大臣の権限を代行する。そのため、緊急事態条項についても代行できると考えることも出来るんだけど、国会の指名を受けていない、総辞職した内閣の、しかも臨時の国務大臣が、人権の停止までできちゃうというのは、無理筋だと思うんだよね」

蓮 「確かに、臨時の臨時って感じだもんな」

まこと「うん。だから、内閣総理大臣が無事である必要があると思う。それから、実際に法案作成能力や執行能力があるのは官僚組織だから、官僚が壊滅していると何も出来ない。そのため、官僚組織の大部分が無事である必要があると思うんだ。でも、官僚組織が無事であるって、どんな状態だと思う?」

蓮 「あ、そんな状態にあるんだったら、国会議員も無事だろうから、別に内閣が独裁的権限を持たなくても、国会を開いて、対処できるって事か」

まこと「と、思うんだな。あと、憲法改正をするにしても、任期を伸ばす必要は無くて、『任期満了後、選挙が出来ない事態が生じた場合に、緊急集会の招集が出来る』とすれば足りるんじゃないか?」

蓮 「確かに、それもありだな」

まこと「それからさ、災害対策を言うのなら、緊急事態条項を設ける前にもっとやるべきことがあると思うんだよね」

蓮 「例えば?」

さら「た〜と〜え〜ば〜、身近なところで言えば、自宅の家具の固定、水・食料の備蓄、現実的な避難計画を立てて避難訓練をするとか、事前準備が大切って事よね」

まこと「おいおい、急に出てきて、人の台詞をとるなよなー」

さら「さっきのお返しよーだ」

憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで につづく・・・

憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?
憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9

災害時には緊急措置があるよ

前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止

登場人物
 さら
 まこと
 麻衣(まい)
 蓮(れん) 
 店長

まこと「何を怒ってんだか。訳分からん」

蓮 「まあ、まことの言いたいことも分からなくもないが、言い方もあるだろ」

まこと「まあ、良いじゃん。直ぐに戻ってくるって」

麻衣「まったく、まことってば適当なんだからー」

まこと「そう言うなってばー。さらだって、理屈先行ですぐ怒るしさ、もっと鷹揚になれば良いのに」

蓮 「おいおい、そういう言い方は良くないぞ。さらにはさらの良さがあるんだからさ」

まこと「確かに、ちょっと口が悪かったな」

蓮 「まったく。おまえらは、昔からつまらないことで喧嘩するからな」

まこと「面目ない」

麻衣「まあまあ、もう子どもじゃ無いんだし、さらも頭が冷えたら、すぐ戻ってくるわよ」

蓮 「そういうことにしとこうや。で、まこと。さっきの続きはどうした?」

まこと「えっと、何の話だっけ?」

蓮 「ポケモンGOや入国禁止令の話だったろ」

まこと「あ、思い出した。そうそう、さっきから言っていたポケモンGOや入国禁止令の話が緊急事態条項の危険性なんだよ。例えば、犯罪者らしい人がいたら、容疑を固めてから逮捕するのでは無く、まず逮捕してから調べるようになる。その方が効率が良いからね。また、デマの流布がされると困るとして、政府以外の情報提供をすべて禁じるかもしれない。本当に市民の安全を思っているのかもしれないけど、政府は自由を必要以上に制限してしまいがちで、罰則を設けるにしても必要以上に重罰化しがち。また、不測の事態にそなえて、違法かどうか分からない行為まで、取り締まれるようにしてしまう。結局、市民は、取り締まりをされないように、必要以上に行動を制約してしまい、家族との会話にも気をつけるようになってしまう。しかも、総理大臣が全て聖人君子ではないので、権限を悪用する人も出てくるかもしれない。だから、さっきは、危険だと言ったんだ」

蓮 「今までの議論を聞いて、まことの意見を聞くと、なるほどって思うよ。内閣だけで全てが出来てしまうって言うことは、迅速な対応が出来る反面、自由がなくなっちゃう恐ろしさがあるんだな」

まこと「おー、分かってもらえたかー」

蓮 「悔しいがな」

麻衣「ねえねえ、今の話を聞いていると、さっき話しに出た、憲法改正の買収禁止の話みたいなんだけど」

蓮 「あ、確かに。お茶を出したり、ちょっと付加価値をつけたビラを配布したら処罰されてしまうから、友達の憲法改正の話も出来ないんじゃないかって話だったもんな」

まこと「その通りだね。本当は、憲法改正は、誰もが自由に議論できることが必要不可欠なんだ。それが、市民活動に制約を書けるような制度にしてしまった愚かさ。実際に、憲法改正されるまでには改善されないといけないと思う」

蓮 「ああ、その通りだな」

麻衣「本当にね。あ、そうだ、何だっけ、何とか措置って話はどうなったの?」

まこと「あー、緊急措置の話か」

麻衣「それそれ」

まこと「話があちこち飛んで、訳わかんなくなってきたよ」

麻衣「大丈夫、私は最初からよく分かってないから!」

蓮 「右に同じ!」

まこと「じゃあ、みんな一緒ってことだな。あっはっは・・・って、何か違うような・・・」

麻衣「まあ、いいじゃない。それより、続き続き」

まこと「はいはい、参議院の緊急集会とは別の、緊急時の制度って話だったよね」

麻衣「そうそう、そんな話」

まこと「緊急措置は、災害対策基本法に定められていて」

麻衣「なんだか、役に立ちそうな名前の法律ね」

まこと「緊急措置は、国会も参議院の緊急集会の招集も出来ない場合に初めて認められる、本当に緊急時の対応で、生活必需品の価格統制や配給、金銭債務の支払猶予について、内閣が、2年以内の懲役などの罰則を設けた政令を定めることが出来るとされているんだ」

麻衣「罰則があるから、委任命令ってことね。さらはこれが言いたかったから、色々話してたのか。やっとわかったわ」

蓮 「なあ、まこと。さっきの話だと、政令に委任できるのは具体的なことだけって話だったけど、これってかなり範囲が広くないか。生活必需品なんていったら、ありとあらゆる物が対象とされないか?」

まこと「そうなんだよ。かなり範囲が広いから、憲法に違反するんじゃ無いかという議論があったくらいだよ。でも、緊急時であるし、経済的自由の制限だけだし、その中で必要かつ合理的な制約なら仕方ないということで、憲法学者から合憲だとの意見が出されて、法律が制定されたんだ」

蓮 「経済的だけっていうことは、何か意味あるのか?」

まこと「ああ、経済的自由の方が、幅広い制限が許されるんだよ」

麻衣「どういうこと?」

まこと「簡単に言うと、自由に任せすぎると、金儲けだけを考える連中によって、人びとの生活が脅かされてしまうって事さ」

麻衣「買い占めとか?」

まこと「そういうこともあるね。他にも価格協定を結んで、安く売らないようにするとか。賃金を値切って、安くこき使うとか。何でもありにすると、みんなの苦境をネタにして、利益を上げようと企む人が出てきちゃう。だから、市民生活を守るために、普段以上に規制が必要とされているんだよ。平常時でも、労働時間の規制とか、最低賃金とか、独占禁止法とかみんなも知ってるような規制がたくさんあるでしょ」

蓮 「なるほどな。平常時でも規制が必要なところだから、非常時にはもっと強力な規制もやむを得ないということなんだな」

まこと「そういうこと。もっとも、やり過ぎは認められませんよって事」

麻衣「わかった! 緊急事態条項だと、人権が停止しちゃうから、必要以上の規制だろうが何だろうが、好き勝手にすることが出来るけど、今の緊急措置は、人権が停止してないから、必要な規制しかできないってことね」

まこと「そのとおり!」

麻衣「えっへん!」

蓮 「さっきは、緊急時に国会で全て決めるなんて現実離れしていると思ったけど、緊急時に、国会が対応できない場合のことを考えていて、ちゃんと法律が作られているんだな」

まこと「そうなんだ。日本は災害が多いから、大災害が起きるたびに、何度も何度も議論して、法律を整備してきたんだよ。だから、緊急時に必要だと思われる内容は、ほとんど法律で整備されているんだ」

蓮 「なるほど。ちなみに、憲法が改正されて、人権を停止させる緊急事態条項が出来た場合に、経済的なもの以外の規制って、何が考えられるんだ?」

まこと「分かりやすいところだと、トルコでもあったけど、政権批判をする報道機関の解散、理由のない逮捕・拘禁があるよね。また、強制労働も出来るし、拷問も可能という人もいる。後は、棄民もできるってことかな。

蓮 「拷問も可能になるのか?」

まこと「そう考えている人もいるってことだよ。今の憲法では拷問は絶対禁止とされているんだけど、これは戦前・戦中の特高による拷問があった反省や人格や尊厳の否定になるからなんだ。それから、国際条約でも拷問は禁止されてるんだ。それにどんな状況にあっても奪うことができない権利という考えがあって、その一つが拷問の禁止なんだ」

蓮 「ん? じゃあ、拷問は認められないんじゃないのか?」

まこと「それがな、自民党改憲草案を見ると、拷問は一定の場合に認められると考えているとしか思えないんだ。今の憲法は拷問を「絶対にこれを禁ずる」とあるんだけど、自民党改憲草案だと、『絶対を』削除して、単に「禁ずる」としている」

蓮 「敢えて『絶対』を削除したと言うことで、例外的に許される余地を作ったってことか」

まこと「そういうことなんだ」

蓮 「なるほどな。自民党改憲草案ってのは、人格の否定までもやろうとしているのか」

まこと「正直、ふざけるな、って言いたいところだ」

蓮 「同感同感。じゃあ、棄民って話は?」

まこと「何らかの災害や攻撃があり、市民が被害を受けた。でも、きちんと情報公開してしまうと、日本全土がパニックになって日本の経済活動がマヒしてしまい、国家として重大な損失が生じてしまう。しかし一方で、完璧に情報統制して、被害地域を隔離封鎖すれば、被災地以外は通常の経済活動が行われる結果、国家全体としての損失は小さく済む。さて、経済や効率のみを考えた場合に、政府はどっちを選ぶと思う?」

蓮 「いやいや、それ比較対照がおかしいでしょ。人命尊重。ちゃんと情報公開して、国を挙げて被災住民を救助しないと」

まこと「ところが、緊急事態条項ってのは、人を守るためではなく、国を守るためのものなんだ。だから、国家の利益を第一に考えて、後者を選ぶ総理大臣がいてもおかしくないでしょ。緊急事態条項には、人はいくら死んでも、国さえ守ればそれでいい。国が滅んでしまえば、人を守るための国家も無くなってしまうぞ。っていう、脅しのような思想が根底にあるんだ」

蓮 「国が滅んでしまえば誰も守ってくれない、だからある程度の犠牲は仕方ないってことはその通りだなって思うけどさ。だからって、人はいくら死んでも良いって事にはならないだろ」

まこと「普通はそう思うとこだよね。人命軽視はおかしいって。でも、戦時中に実際にあったんだ。終戦間際の1944年に東南海地震が、翌45年に三河地震が起きて、それぞれ死者1000人を超す大きな被害を受けたんだ。でも、敗戦色が濃くなっていた時期だし、軍事工場が被災したこともあって、被害を隠すことが国のためになると考えた軍による報道管制が敷かれた。その結果、近隣からの応援も、政府による組織的な救助もされなかったため、被害が更に大きくなったんだよ」

蓮 「戦時中とはいえ、本当に棄民のようなことをしてたんだ。知らなかった」

まこと「同じようなことをさせないためには、緊急時であっても、人権の停止させる権限を与えてはならないと思わない?」

蓮 「そう言われると、そんな気もするな」

まこと「国に対し、国が個人を守ることを強制しているのが憲法なんだ。国を守るために、人びとを犠牲にする政治は、70年前に決別したはずだと思うんだよね」

蓮 「沖縄を焦土とし、各都市を空襲され、広島長崎に核兵器を落とされても、政府は、人びとの命を救うことを考えず、なお国体護持の議論をし続けていた時代か」

まこと「うん。そうなってしまう可能性がある限り、反対しないといけない。と俺は思うんだ」

蓮 「なるほどなぁ。まことが緊急事態条項に反対する気持ちが分かったよ」

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?につづく・・・

憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?
憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8

緊急時も濫用防止!

前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?

登場人物
 さら
 まこと
 麻衣(まい)
 蓮(れん) 
 店長

さら「ところでさ、ねえ、まこと」

まこと「ん?」

さら「さっきから、新たな立法が必要な場合について話してるけど、災害対策基本法の緊急措置のことを忘れてない?」

まこと「あ、そうか。その話があったか」

麻衣「何なに、緊急措置って」

さら「参議院の緊急集会とは別の、緊急時の対応策よ。まことが今説明していた緊急集会の他に、委任命令があるの。そして、災害対策基本法に設けられた委任命令は、緊急措置と呼ばれているの」

麻衣「????」

さら「えっと、最初から説明した方が分かりやすいかな。国会は唯一の立法機関って言葉を聞いたことがない?」

麻衣「法律を作れるのは、国会だけって事でしょ」

さら「そう。国会って、国民が選挙で選んだ国会議員から成り立っているでしょ。つまり、自分たちが守らなければならない法律は、自分たちの代表者が作るってことなの。もし特権階級の人に法律を作らせたとしたら、自分たちには適用されないんだから、厳しい法律も躊躇なく制定しちゃって、庶民は苦しむかもしれない。でも、自分たちのことは自分たちで決めれば、むちゃくちゃなことにはならない。だから、国民の代表からなる国会しか法律を作れないとすることで、権力の濫用による人権侵害が起きないようにしているの」

麻衣「また濫用が出てくるのね」

さら「そうね、いつも濫用防止が顔を出すわ。でも、権力者の濫用を防止するために憲法があるのだから、当然と言えば当然よね」

麻衣「なるほどねぇ、憲法の意味が何となく分かってきたような気がする。・・・あ、話の腰を折ってごめん。で、国会がどうしたんだっけ?」

さら「国会は唯一の立法機関といったけど、政府も、政令と言う法律みたいなものを作れるの」

麻衣「じゃあ、国会以外も法律を作れるってこと?」

さら「そう聞こえるけど、そうではない、というところね。国会が定める法律と、政府が定める政令の違いってわかる?」

麻衣「定める人が違うって事?」

さら「それも違いではあるんだけど、一番の違いは、法律と政令には序列があって、法律が上位法、政令が下位法ってことなの。つまり、政令は法律を実行するために設けられるものであって、法律からまったく独立した政令の制定は許されないってこと」

麻衣「えっと、要は、法律が親玉で、政令が子分って感じ?」

さら「そんなイメージで良いと思うわ。政令にも大きく分けて2種類あるの。執行命令と委任命令ね。執行命令は、法律の内容を実現するために、細目的規定を定めたもの。例えば、法律で「届出」とあるので、政令で、その届出の方法や書式を定めるようなものね。もう一方の委任命令は、法律の委任に基づき、私人の権利義務について定めたもの。法律が特定の事項についてある程度抽象的にしか規定せず、具体的内容は制令に任せるという場合ね」

麻衣「どっちも、法律がおおざっぱだから、制令で細かく決めるって事でしょ。何で区別する必要があるの?」

さら「委任命令は、人びとの権利義務を決める内容だってところがポイントね」

麻衣「どういうこと?」

さら「さっきも言ったけど、国会だけが、人びとの権利義務を決める法規を定めることが出来るという原則があるでしょ。でも、今は社会が複雑化し、また国も、社会権を実現するために様々な考慮が必要とされるようになった。こういう様々な要素を考慮し適切な内容とする権能があるのは、少人数の国会では無く、むしろ専門的技術的集団である行政では無いかと考えられるようになってきたの。そのため、国会では大枠を決め、具体的な内容については、政府に任せるという役割分担をするようになった。この役割分担により、法律の委任に基づき、具体的内容を定めた政令が委任命令ね。法律の委任があれば、罰則を設けることも認められるわ。ただし、全て政府に任せてしまうと、国会で決める意味が無くなってしまうので、包括的な委任は許されず、限定された委任に限るとされているの」

麻衣「さらぁ、難し過ぎるよぉ」

さら「そう? うーん、どうやったら伝わるのかな・・・」

まこと「なあ、麻衣。ポケモンGOってしってる?」

麻衣「え、何? 急にどうしたの?」

まこと「まあまあ。で、知ってる?」

麻衣「実際にスマホを持って歩いて、ポケモンが出る場所を探して、仲間にするゲームでしょ。それがどうしたの?」

まこと「運転中にやっていて、死亡事故が起きたってニュース聞いたことある?」

麻衣「うん、聞いたことあるよ。」

まこと「やっぱりポケモンGOを運転中にやることは危険だよね」

麻衣「うん」

まこと「携帯電話で話をしているのと、運転中にポケモンGOをしているのと、どっちが危険だと思う?」

麻衣「どっちも危険だと思うけど、電話は前を見て運転しながら出来るけど、ポケモンGOはよそ見をして、スマホの画面を見ないと出来ないから、前を見ないポケモンGOの方が危ないかな」

まこと「うん、俺もそう思う。携帯電話で話をしている人は取り締まりの対象だから、当然ポケモンGOをやっている人も取り締まる必要があるよね」

麻衣「うん、そうよね」

まこと「でもさ、スマホをいじっていても、ポケモンGOをしているかどうかわからないじゃん」

麻衣「確かに」

まこと「それから、ポケットとの中にスマホを入れていても、実はポケモンGOを立ち上げて、プレイしているかもしれないよね」

麻衣「可能性としてはあるかもしれないわね」

まこと「ということは、ポケモンGOの取り締まりをするためには、スマホを手で持っているかに関わりなく、運転中の全てのスマホをチェックする必要があるってことだよね」

麻衣「えー、どうしたらそんな結論になるの!? ポケモンGOを立ち上げていても、全く画面を見ないなら、問題ないじゃ無い」

まこと「だって、現場の人たちのことを考えてみてよ。運転中にポケモンGOの画面を見ている人をどうやって発見するの?」

麻衣「それは・・・・、白バイで併走して、横から確認するとか」

まこと「誰がポケモンGOをプレイしてるか分からないし、ポケットの中で入れてプレイしているかもしれないのに、そんな取り締まり現実に可能だと思う?」

麻衣「やっぱり難しいよね」

まこと「すると、取り締まりをキチンと行うなら、運転中の全てのスマホをチェックする必要があると思わない?」

麻衣「そう言われれば、そんな気もするけど・・・・。何だかおかしいよ、それって」

まこと「別におかしくないよ。きちんと取り締まる必要があるんだから、実効性を持たせるべきでしょ。すべてのスマホをチェックするためには、警察には検問する権限を与えて、自動車は全て止められるようにする必要がある。そのため、停止しない違反者には罰則を科す。これで、完璧にチェックできるようになるね」

麻衣「確かに、そうすれば完璧に違反者を取り締まれるようになるかもしれないけど、それってやっぱりおかしいよ」

まこと「うん、そのとおり、おかしいよね。実は、今行われている検問って、凶悪犯罪の捜査の場合でも、強制的に自動車を止めることは出来ないんだ。それを、ポケモンGOの取り締まりのために、強制的に止められるようにするのは、やりすぎだよね」

麻衣「そうそう、やりすぎだよ」

まこと「でも、取り締まる方としては、やりやすいことは確かでしょ」

麻衣「まあ、確かに」

まこと「こんな風に、行政が何をした人を取り締まるのか決めちゃうと、自分たちの取り締まりしやすいようにとしか考えないので、取り締まりやすいように、行政が好きなように解釈できる曖昧な基準を設けて、なるべく範囲を広げようとする。そうすると、必要以上に、自由が制限されてしまう。ってことは、何となく分かる?」

麻衣「うーん、何となくなら」

まこと「ところで、トランプ大統領が、入国禁止令を出したってニュースは知ってる?」

麻衣「流石にそれは知ってるわよ」

まこと「この入国禁止令って、今言った話そのままなんだよ」

麻衣「どういうこと?」

まこと「トランプ大統領は、アメリカへのテロリストの入国を防ぐために、入国禁止令を出したんだ。本来ならば、テロを本当に起こす危険性のある人だけ排除すれば足りる。でも、人の心は読めないから、誰がテロを起こすかなんてなかなか分からないよね。いくら諜報機関が頑張っても、テロリストの入国を100%阻止することはできない。それだったら、テロリストが多そうな国からの入国なんて全部禁止してしまえ!、ってやったのが入国禁止令なんだ」

麻衣「へー、まことの話って、荒唐無稽であり得ない馬鹿馬鹿しいものだって思ってたけど、実際にやっちゃう大統領もいるのね」

まこと「なんか酷い言われようだけど、分かってもらえた?」

麻衣「うん、何となく。権力者って、細かいことなんて抜きで、何でも禁止しちゃって思うものなのね」

まこと「そういうこと。だから何度も言っているように、権力は濫用の危険があるって話になるんだ」

麻衣「なるほどね〜」

まこと「で、さっきの法律と政令の話に戻るけど、政令は、行政が定めるものなので、今言ったように、必要以上の制約をしがちだし、官僚や内閣の話し合いだけで済むから、第三者のチェックが入らない。そのため、おかしな内容であっても、そのまま決まってしまう可能性が高い。これが国会での議論だったらどう?」

麻衣「あ! 野党がおかしいって意見を言うだろうし、マスコミが報道すれば、みんなおかしいって声を上げるから、今後の選挙への影響も考慮して、与党も妥協せざるを得なくなり、無難な線に落ち着くって事?」

まこと「Good!」

麻衣「あー、だからさっき言ってた、権利義務については原則として国会で、って話になるのね」

まこと「そういうこと。法律は大枠を定めて、細かいことは行政に任せる場合でも、どこまで任せるか、ちゃんと制限を設けておいて、行政の好きにはさせないようにしておくってこと。それが、さらの言っていた、包括的委任は許されないってことさ」

麻衣「なるほどねー」

さら「ちょっとー、人が説明しているときに割り込まないでしょー。ちゃんと理屈から説明してたのに」

まこと「難しい理屈よりもさ、感覚で掴んでもらった方が良いんだってば。さらは理屈を話し始めると止まらないし、理屈で理解してもらおうなんて思ってたら、日が暮れちゃうよ」

さら「何よー、馬鹿にして! プンプン!」

蓮 「おいおい、怒ってあっち行っちゃったぞ」

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ につづく・・・・

憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?
憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7

緊急事態条項って、いる?いらない?

前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項

登場人物
 さら
 まこと
 麻衣(まい) 
 蓮(れん) 
 店長

麻衣「ねえねえ、何で日本には、緊急事態条項が設けられなかったの? たくさんの国にあって、日本にないのは不思議なんだけど」

さら「入れた方が良いという意見もあったけど、色々議論をして、結局、設けないことに決まったの」

麻衣「へー、何で入れない方が良いって思ったの?」

さら「一つは戦前の反省ね。戦前の大日本帝国憲法は、非常時には天皇の権限を強化するための規定がいくつも設けられていたの。でも、その権限が濫用されてしまったの。侵略戦争に突き進んだのは政治によるものだとしても、それを止めることができず、むしろ後押しをしてしまったのが、緊急権に関する規定だったのよ。だから新しい憲法には、緊急事態条項を設けなかったの」

麻衣「濫用されないように、条件とか制限をつかるとかは考えなかったの?」

さら「そうね、そういう考えもあったと思うわ。でもね、新しい憲法では、天皇主権から、国民主権に変わった。だから民意を最大限に尊重したのね。つまり、緊急権は行政にとっては便利だけど、肝心の国民を無視してしまう。そんなことは避けるべきだと言う意見が採用されたの」

麻衣「なるほどね。あたしはあまり国民主権って気にしたこと無かったけど、憲法を作った人たちにとっては、大切なことだったのね」

さら「今でも大切なことよ。それを忘れないようにしないとね」

まこと「日本の場合って、緊急時の対応も、国会が中心になって決めてきたよね」

さら「そうね。戦後の様々な自然災害に対処していく上で、災害対策基本法、災害救助法など様々な法律を作って、緊急時に対応できるようにしていったわ」

麻衣「法律が色々整備されることは分かったんだけど、急に新しい法律が必要なこともあると思うの。そういう場合はどうするの?」

さら「緊急時に対応するために、別の制度を設けたの。一つは参議院の緊急集会。もう一つは、委任命令ね」

麻衣「どういうこと?」

さら「参議院の緊急集会は、衆議院が解散されたときに、緊急に法律を制定しないといけない事態が生じた場合に、参議院だけ開いて、一時的な法律を作るという仕組みなの」

麻衣「それって特別なことなの?」

さら「うん、特別よ。他国に類を見ない制度なの。まず、国会でしか法律を作れないという原則があることが出発点ね。緊急時であっても、国会開会中なら、そのまま法律を作れば良いわよね。そして国会が閉会中なら、臨時会を招集して法律を作る。でも、衆院が解散されていた場合はどうするのかって問題なの」

麻衣「参議院があるんだから、参議院で決めれば良いんじゃないの?」

さら「単純にそういうわけにはいかないの」

麻衣「何で? せっかく2つあるんだもん、残った方で法律を作れば良いのに」

さら「国会って、衆議院と参議院の両院から構成されていて、どちらが欠けても、国会は成立しないの。それは何故かというと、構成員の違う衆議院と参議院で議論することで、慎重な議論をして、色々な意見を反映させるためね。そのため、衆議院が解散されてしまうと、参議院も一緒に閉会されてまうの」

麻衣「もったいない」

さら「でも、衆議院は与党が多数で、参議院では野党が多数という、ねじれ国会の場合を考えみて。国会開会中は、与野党で争いのある法案があったら、衆議院で採決されても、参議院で否決されてしまい、法律は制定しないわよね。でも、衆議院が解散したあと、参議院だけで法律が出来てしまうとしたら?」

麻衣「あ、今度は、衆議院とのねじれを考えなくて良いから、参議院の賛成だけで法律が成立しちゃう!」

さら「そうね。しかも、野党だけの意見が反映された法律になってしまい、政策の一貫性が欠けてしまうおそれがあるわ。だから参議院だけで法律を制定させることは、普通ではあり得ないことなの」

麻衣「でも、緊急時は違うって事ね」

さら「緊急時も、衆参とで意見の食い違いがあるかもしれない。でも、緊急時にはそんなこと言ってられない。とりあえず新しい法律を作らないとどうしようもない。という状況よね。だから、特別に規定を設けて、参議院だけで一時的な法律を制定できるようにしたの」

麻衣「一時的?」

さら「そう、一時的。後で衆議院の賛成が得られなかったら、効力を失ってしまうの」

麻衣「へー。緊急時の法律だからってことなのね」

さら「そうすることで、緊急時の必要性と、衆議院の意見の反映を両立させたのね」

蓮 「あのさ、一つ聞きたいんだけど」

さら「何?」

蓮 「さっきから、国会の臨時会でとか、参議院の緊急集会とかいってるけど、緊急時って、その緊急集会も開く余裕が無いんじゃないの? それに議会で議論している余裕も無いんじゃないのかな」

さら「どこまでの緊急事態を想定しているのかにも依るわね。現行憲法制定時の金森国務大臣が、緊急事態条項の必要性について述べていたことが参考になると思うの。要約すると、この制度が無くても支障が生じないとは断言できないけれど、関東大震災や東京大空襲を含んだ数十年間の歴史を振り返っても、間髪入れないほどの急務は無かったのだから、臨時会や緊急集会を開く余裕があると考えられる、と言っていたわ」

蓮 「へー、そんな話があったのか。でもさ、例えば、首都直下型地震で国会議事堂が崩落した場合なんて、臨時会や緊急集会を開くことが出来ないじゃんか。そんなときはどうするのさ?」

さら「えっと、その場合は・・・」

まこと「国会議事堂がなくなっても、別の場所で開けば良いさ。特に場所は限定されてないだろ」

蓮 「なるほど。じゃあ、多数の国会議員が死傷した場合は?」

まこと「まず定足数が総議員の3分の1で足りるので、過半数の死傷者が出ても議会は成立する。それならだいたいの場合何とかなるんじゃないのかな。それに亡くなった場合は、繰り上げ当選によって議員数を確保することが出来る。ってことじゃダメ?」

蓮 「ダメじゃないけど・・・、議会が開会できなくって対処できない可能性があると、やっぱり不安な気持ちは残るなぁ」

まこと「議会が開会できない万が一のために、緊急事態条項が必要だって事か」

蓮 「うん」

まこと「でもさ、国会議員の多くが死傷している場合って、当然霞ヶ関にも大きな被害が出て、行政組織もズタズタって状態だろ。そんなときに、官僚のバックアップのない内閣総理大臣に何か期待できることあるのか?」

蓮 「うーん、そう言われると、何が出来るんだろう」

まこと「各所で交通や情報網が寸断されている。死傷者も多数に上り、救助活動や消火活動で手一杯だ。情報も足りないし、人手も足りない。しかも、官僚の組織的なバックアップもない状態で、内閣だけで、法律が新たに必要かどうかを判断し、しかも条文に落とし込む作業が短時間で出来るか? むしろ、そんなことしてる余裕があるなら、内閣は全力を挙げて、現行の法制を駆使して、事態に対処すべきだと思うよ。仮に新たな法整備が必要だとしても、災害の発生から数日経って、被害の状況が確認できるようになってから、初めて立法の必要性が判断できるんじゃないかな。そして、それだけの日数があれば、議会の招集をする時間も確保できるだろうから、通常の体制でも対処可能という結論になると思うけど」

蓮 「それでもやっぱり、議会が招集も出来ない事態がある場合に備えた方がよくないかな」

まこと「そんな現実にあるかどうかも分からない事態のために、ナチスの全権委任法みたいな権限を総理に与えるのか? 一度濫用されたら、対処しようが無くなるのに?」

蓮 「濫用するとは限らないだろ。まことはどうして、いつも政府は権限を濫用するって考えるんだよ。そっちの方が現実を見てないんじゃないのか?」

まこと「政府が権限を濫用するなんて、歴史を見れば明らかだろ!」

蓮 「いつのどの歴史さ!」

さら「まあまあまあ、二人とも熱くならないでさ」

麻衣「そうそう、お冷やでも飲んで、一度落ち着こうね」

蓮 「おう、ありがと」

まこと「さんきゅー」

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止! につづく・・・

憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?
憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6

危険がひそひそ緊急事態条項

前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?

登場人物
 さら
 まこと
 麻衣(まい) 
 蓮(れん) 
 店長

さら「あー、冷たくて美味しい☆」

蓮 「やっぱり夏はかき氷だよな」

さら「ここのかき氷は天然の氷を使ってるから、ふわふわで美味しいわね」

まこと「ほんとほんと、さいこ〜だね」

麻衣「あ〜。美味しかった」

蓮 「食べおわった後の、ほうじ茶がまた良いよな」

麻衣「そうそう、ほうじ茶の香りは幸せの香りよね」

さら「麻衣は詩人ねぇ」

麻衣「てへっ」

まこと「さてさて。落ち着いたところで、さっきの続きなんだけどさ。麻衣と蓮は、人権の制限と停止の違いってわかる」

麻衣「え・・・わかんない」

蓮 「同じような気がするけど、違うのか?」

まこと「うん。全然違うんだ。人権の制限っていうのは、今も普通に行われていることだよ。例えば、表現の自由といっても、何を言っても許されるわけじゃないでしょ」

蓮 「悪口はダメだよな」

麻衣「嘘もついちゃダメよね」

まこと「うん。何でもありではなく、ルールがあるよね。全くでたらめなことを言って、相手の名誉を傷つけたら、名誉毀損罪になるでしょ。これって、人の名誉を守るために、表現の自由を制限しているんだ」

蓮 「えっ、それが人権の制限なの? 言葉で他人を傷つけちゃいけないなんて、当たり前の事じゃん」

麻衣「そんなに特別なことなの?」

まこと「それじゃ、政治家が賄賂もらってたって報道することも、政治家の名誉を傷つけたと言って、同じように犯罪になると思う?」

蓮 「それは、賄賂をもらう方が悪いんだから、名誉毀損罪にしちゃマズいだろ」

麻衣「それで犯罪になったら、政治家はやりたい放題になっちゃうわ」

まこと「そう思うよね。だから名誉毀損罪は、名誉を傷つけても、犯罪にならない場合を認めているんだ」

蓮 「わかった。今度は、報道を守るために、名誉に制限を加えるわけだな」

まこと「ピンポーン。表現の自由も、人の名誉も、どちらも重要な権利でしょ。でも、それぞれの利益が衝突する場面になったら、どちらかが折れないと、社会が治まらない。だから、どちらかの権利に譲歩してもらう。それを公共の福祉による制限って言うんだ」

麻衣「あ〜。公共の福祉って、なんか聞いたことある」

まこと「他にも色々なところで公共の福祉による制約があるんだ。人が自由に生きるためには、自由に行動できることが必要だよね。だから、人身の自由が保障されている。でも一方で、犯罪を犯した場合に、令状に基づき逮捕されるなど、自由には一定の制約がある。また逆に言えば、人身の自由があるから、例え犯罪を犯しても、法律の定める手続きによらなければ逮捕・拘留されないとも言えるね」

蓮 「犯罪を犯したことが明らかなのに、手続きを守らなければならないのか? それって秩序維持に問題があるような気がするんだけど、やっぱりそれなりの意味があるのか?」

まこと「犯罪を犯したことが明らかだと、誰が判断すると思う?」

蓮 「そりゃ、警察だろ」

まこと「警察の判断って、絶対に間違えないと思う?」

蓮 「絶対とは言えないな。えん罪事件とか誤認逮捕とか聞くもんな」

まこと「ちゃんとした証拠もなくって、警察の思い込みから逮捕されたらどうする?」

蓮 「アリバイを調べたり、真犯人を見つけたりして、解放してもらう。かな」

まこと「でもさ、アリバイって証明するのかなり難しいよ。何をしていたか覚えてなかったらそれまでだし。ちゃんと覚えていても証拠が無いかもしれないし。証拠があっても、信用してもらえなかもしれない。それに、真犯人見つけるなんて現実は不可能だろ。そうすると、結局警察の判断で解放されるのを待つしか無い、ってことにならないかな」

蓮 「そう言われると、そうかもしれないな」

まこと「また、うまくアリバイを証明できたとしても、警察の思い込みで不要な逮捕をされたこと自体が問題でしょ」

蓮 「確かに」

まこと「あと、警察に悪い人がいて、点数稼ぎとか、気に入らない人がいるからとか言った理由で、犯人じゃないとわかっていても、逮捕する警官がいるかもしれないじゃん。それをどうやって止めたら良い?」

蓮 「うーん、無罪の人を陥れるためにかぁ。それはどうしようもないな。逮捕する前に、他の人にチェックしてもらうとかかな」

まこと「そういうこと。やっぱり第三者のチェックをすべきだよね。さっき言った法律の手続きってのは、適正手続きの保障っていうんだけど、簡単に言うと、捜査機関ではない裁判所が、ちゃんと逮捕する要件がそろっているかチェックするって事なんだ。裁判所から令状をもらって、初めて逮捕が出来る。そうすることで、不要な逮捕をなくすことができる。結果的に、個人の自由が守られるって仕組みなんだ」

蓮 「なるほどなぁ」

まこと「ね。人権の保障とか、人権の制限って、特別の事じゃ無くて、普通のことでしょ」

蓮 「ああ、何となく分かってきたよ。今の社会で行われていることが、人権の制限なんだろ」

まこと「そういうこと。ところが、人権の停止になるとどうなると思う?」

蓮 「人権の制限と停止の違いって事か。停止って事は、一時的に止めるって事だから、あまり違いは無いと思うんだけどな」

まこと「ところがぎっちょん大違い。人権の停止は、一時的に人権がなくなっちゃうことなんだ」

蓮 「なくなっちゃう?」

まこと「そう、なくなっちゃうってこと。さっき話した、表現の自由も、人身の自由もなくなっちゃう。だから、例えば、表現の自由がないんだから、政権批判をしたら、それだけで罪にすることができる。また、人身の自由もないから、警察が犯人だと思ったら自由に逮捕することが出来るってこと」

蓮 「いやいや、さっき、それはまずいって話をしたばっかりだろ」

まこと「うん、まずいんだよね。例えば、去年トルコでクーデター未遂があっただろ。あの後、非常事態宣言が出されたんだけど、クーデター未遂の容疑者をとらえるという名目で軍・警察・司法関係者を1万人以上拘束して、その他公務員を合わせると、6万人以上拘束・解雇したんだ。それに、新聞、テレビ、ラジオ、出版社など130以上に閉鎖命令をだして、報道させないようにしたんだ。これは全部、非常事態宣言による、人権の停止によるものなんだ」

蓮 「それって、独裁政治による粛正じゃん。報道させないようにして、好き勝手やろうとしてるだけじゃん」

まこと「俺もそう思う」

蓮 「いやいや、そう思うじゃ無くて、ダメでしょ。こんなの。・・・でも、なんでそんな危ない権限が設けられてるんだろう。最初っから憲法に記載してなきゃ良いのに」

まこと「うーん、何でだろ」

蓮 「なあ、さら。何で、こんなのが設けられちゃうんだ?」

さら「!? ・・・・げほげほ」

麻衣「ほら、さら。お茶お茶」

さら「ありがとう。・・・ごくごく・・・。あ〜。びっくりした。急に話を振らないでよ。ケーキがのどに詰まったわ」

蓮 「ごめんごめん。っていうか、いつの間にケーキを頼んだんだよ」

さら「あ、これは店長のサービス。試作品なんですって。美味しかったわ〜」

麻衣「確かに美味しいけど、ちょっと酸味が効き過ぎだと思うわ」

まこと「どれどれ、俺にも味見させてよ。・・・もぐもぐ、あ、確かに酸味が強いかも」

蓮 「俺にもよこせよ。・・・もぐもぐ。こんなもんじゃないか。・・・って、いやいや、ケーキじゃなくてさ、緊急なんとか、だっけ。あれは何で設けられてるんだ」

さら「緊急事態条項が何故設けられるのか、ね。そうねぇ、歴史的なものとか、状況が必要としているとか、憲法上何らかの根拠規定をおいておくためとかかな」

蓮 「どういうこと?」

さら「もともと国家って、何でも出来る国王とか皇帝がいたでしょ。その権限が解体されて、憲法の縛りを受けて、民主化されて、今みたいな国になったのね。でも、民主化って、それまで国王とか皇帝が決めていたことを、議会において自分たちで決めなきゃいけない。でも、特に初めて民主制に移行する場合なんて、議会に任せるなんて不安だし、そもそも議会を信用しないわけよね。だから、こういう権限を行政に与えておくことが、国を運営する上で必要だし、安心だと思ったんじゃないかと思うの。ドイツのワイマール憲法なんて、そんな感じで設けたのよね」

まこと「ワイマール憲法の場合、国家緊急権が乱発されて、議会自体がその意味を失っていった側面があるよね。そして最後にヒトラーに濫用されて、ナチスの独裁になっちゃった、と」

さら「そうね、どうしても濫用の危険は避けられないところね。他には、内戦が続いた後に成立した国などでは、再び内乱が勃発し、混乱状態に陥る可能性が高いわよね。そういう時に、内乱に対処するための方策を考えるために、全国から議員が集まって、時間をかけて議論するなんて迂遠なことをしてられないわよね。迅速な対応が取れないと、内乱に対処できず、せっかく作った政府が瓦解してしまうことになってしまう。だから、国の形が安定するまでは、内乱などに対して迅速な出来るように、緊急事態条項を設ける例が多いんだと思うわ」

蓮 「なるほど」

まこと「他には、どうせ非常事態になったら権力は暴走するんだから、歯止めとして、権限の上限や期限を定める意味で、緊急事態条項を設けた方が良いという意見もあるけどね。」

蓮 「でもさ、何も無いところに、新しい条項を設けたら、権限が拡大したと言うことになって、歯止めにならず、かえって暴走を招くんじゃないのか?」

さら「私もそう思うの。日本の場合は、緊急事態条項を設けてしまうと、今まで無かった権限を与えたことになってしまい、権力に好きにやって良いという誤ったメッセージになってしまうと思うの」

まこと「そうそう。俺もそう思う。緊急事態条項の話で、他の国にはある、みたいな話がよくされるけどさ、他の国と日本とでは状況が違うんだから、日本に緊急事態条項が必要なのか、設けた場合にどんな問題があるのか、ってことをちゃんと考えないといけないと思うんだよね」

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?につづく・・・

憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?
憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5

緊急事態条項ってなに?

前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!

登場人物
 さら
 まこと
 麻衣(まい) 
 蓮(れん) 
 店長

さら「・・・・」

蓮 「・・・・・・・・」

麻衣「・・・・・・・・・・・・収まった?」

さら「あ〜怖かった」

麻衣「結構揺れたよね」

さら「あっ、紅茶こぼれちゃってる。台ふきもらってくるね」

蓮 「すまねぇ」

麻衣「お願いね」

蓮 「・・・・・しかしさ〜、最近地震多いよな」

麻衣「ホントホント。昔より多いよね」

蓮 「あ、地震速報来た。最大震度5強だって。ここも震度5弱かよ」

麻衣「昔は震度5って、ものすごく大きいって印象だったけど、今は震度5って普通になっちゃったよね」

蓮 「東日本大震災の後、完全に活動期になっちゃってるんじゃないかな」

麻衣「熊本の地震も震度7もあったし、この国ってどうなっちゃうんだろう」

蓮 「地震が起きると、家が倒壊して道をふさいだり、動けなくなった車が放置されて、緊急車両も入れないとか言うじゃん。あれは何とかならないのかな」

麻衣「確かさ、憲法改正しないと対処できないんじゃなかったけ」

蓮 「そうそう、東日本大震災のときは、憲法のせいで死人が出たって聞いたよ」

麻衣「やっぱり、緊急時って、憲法が足かせになるのかな」

蓮 「なるんじゃないの? ほら、財産権とかあるじゃん。道をふさいでても、勝手に家を壊せないし、車とかも勝手に処分できないでしょ」

麻衣「なるほどね。だから迅速な対応が出来ないって事か」

蓮 「そういうことだな。さっきは、憲法改正が危ないみたいな話になったけど、必要な改正もあるってことだよな」

麻衣「うん、よく考えたら当たり前よね。良いものもあれば、悪いものもある。全部悪いなんて決めつけちゃいけないってことね」

蓮 「そういうこと。で、どう憲法改正したら良いんだ?」

麻衣「何だっけ、緊急なんとかが必要って言ってたよね」

蓮 「えっと・・・そうだ、たしか、きんきゅ〜じたいじょ〜こ〜♪」

麻衣「それそれ! って、ドラえもんかよ!」

蓮 「あははは。つい」

麻衣「あはは、まったく、蓮もかわらないなぁ」

蓮 「当たり前だよ。三つ子の魂百までっていうじゃん」

麻衣「昔はよく馬鹿やってたもんね」

蓮 「そうそう、何も考えなくても生きられたあの頃が懐かしいよな」

麻衣「そうね。生きにくい世の中になっちゃったもんね」

蓮 「おっと、それ以上言うと愚痴の言い合いになっちゃうからやめとこう」

麻衣「それもそうね。あれ、そういえば、何の話をしてたんだっけ」

蓮 「だからさ、きんきゅう〜じたいじょ〜こ〜♪」

麻衣「あはは、もうそれはいいってば」

蓮 「いや〜、つい」

麻衣「で、その緊急事態条項ってどんなどんな話だっけ」

蓮 「いや、しらん」

麻衣「って、散々ネタ振っといて、しらないんか!」

蓮 「いや〜。言葉だけは聞いたことあるんだけど。じゃあ、麻衣は知ってるのか?」

麻衣「知ってたら、聞かないってば」

蓮 「確かに」

麻衣「じゃあ、さらが戻ってきたら聞いてみよっか」

蓮 「そうだな。あ、噂をすれば・・・」

さら「ごめん遅くなった。店長ってば、地震にびっくりしてお店の外に飛び出してたもんだから、探しちゃったよ」

麻衣「そうなんだ、店長も慌てん坊だな」

蓮 「いやいや、地震の時は、建物に潰されないように外に飛び出る方が良いとも言うぞ」

麻衣「のんびり屋みたいに見えるけど、意外に、店長は機敏ってことね」

さら「さてと、テーブルも拭き終わったわ。店長、台ふきありがとう。あと、紅茶ももう一杯お願いね」

麻衣「あ、あたしもお替わりお願い」

蓮 「俺は、ブレンドコーヒー追加で」

麻衣「ありがとうね、テーブル拭いてもらって」

さら「ううん、たいしたことないわよ」

蓮 「あ、そうだ。さら、ちょっと良いかな」

さら「ん、なに?」

蓮 「緊急事態条項について聞きたいんだけど」

さら「緊急事態条項? ああ、憲法改正の話の続きね。憲法改正をするなら、緊急事態条項が一番可能性があるんじゃないかって言われるわ。よく『お試し改憲』とか聞くでしょ」

麻衣「お試し改憲?」

蓮 「あー、聞いた覚えたがあるぞ。あれだ、ほら、本当は9条を改正したいんだけど、いきなりやると反発が強いから、憲法改正へのアレルギーを払拭するために、とりあえず一度改憲してみようって、感じで言われてる、あれか」

さら「そうそう」

麻衣「ってことは、緊急事態条項については、必要だからみんな賛成する人が多いってこと?」

さら「私はそうは思わないけど、そう言う人もいるわね」

麻衣「さらは反対なの?」

さら「うん」

麻衣「なんで? 震災とかあったときに、迅速に対応するためには必要だと思うんだけど」

さら「私は必要だと思わないわ。あと、反対の理由は色々あるけど、一番大きな問題は、緊急事態条項が設けられた場合の副作用が大きすぎるということかな」

麻衣「副作用?」

さら「緊急事態条項とは、どういうものだか知ってる?」

麻衣「ううん、わからないから、さらに聞こうかと思って」

さら「緊急事態条項は、簡単に言うと国家緊急権を定めた規定ね」

麻衣「国家緊急権?」

さら「教科書的に言うと、戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、国家権力が、立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限のことなんだけど、意味分かる?」

蓮 「正直、さっぱりわからん」

麻衣「災害が起きたら、私たちのことを国が守ってくれるって事じゃないの?」

さら「違うわ。簡単に言うと、戦争や災害が起きたら、国を守るために、人びとの人権を停止するってことよ」

麻衣「非常事態が起きたら、多少制限されても仕方ないんじゃないの?」

蓮 「そうそう、人権守って国滅ぶじゃ、しょうが無いだろ」

さら「んっと、そうじゃなくて、国は、人びとを守る義務があるでしょ。それが逆になって、人びとを犠牲にしてでも国を守ることになっちゃうの」

蓮 「だからさ、国がなくなっちゃったら、誰も守ってくれなくなっちゃうんだろ。そしたら、多少の犠牲は仕方ないんじゃないか?」

麻衣「うん、私もそう思う。非常事態って、命の危険があるんでしょ。そんなときに人権とか言って、国の行動を制限しちゃうと、かえって危険が増しちゃうんじゃないの?」

さら「人権の歯止めがないと、国はどこまでも暴走しちゃうかもしれないの。だから、歯止めは残しておかないといけないのよ」

蓮 「それって、現実を見てない机上の空論じゃないの?」

麻衣「国の手足を縛った結果、現実の事態に対処できなかったら意味ないわよ」

さら「必要性があるからと言って、何をやっても良いというわけじゃないでしょ。だから、きちんとコントロールできるようにしておかないと」

麻衣「必要なことが出来ない方が問題だと思うわ」

蓮 「そうそう。権力は暴走するからという理由でがんじがらめにして、いざという時に何も出来なかったじゃ本末転倒だろ」

さら「あ〜、なんで分かってもらえないの!!」

まこと「・・・あのさ〜」

麻衣・さら「きゃ!」

蓮 「うぉっ!」

麻衣「・・・なんだ、まことか」

さら「びっくりさせないでよ、も〜」

蓮 「お前がいたこと、すっかり忘れてたよ」

麻衣「あ〜、びっくりした。いったい何やってたのよ」

まこと「ごめんごめん。あれから、色々注文したらこっちのテーブルに乗り切らなくてさ、隣のテーブルに移動して食べてたんだよ」

蓮 「うぉ! 隣のテーブル、お皿で一杯じゃん。お前、一体どれだけ食べたんだよ」

まこと「えへへへ、たくさん♪」

麻衣「まったく」

さら「まことらしいわね」

蓮 「さっきの地震の時は、姿が見えなかったけど、どうしてたんだ」

まこと「あ〜、ほら、テーブルの上のお皿が落ちそうだっただろ。だから、落ちる前に、ササッとお皿を抱えて、テーブルの下に潜って、安全を確保してから、そのまま食べてたよ」

蓮 「おまえ、あの一瞬でそこまで機転を利かせたのか」

麻衣「すごすぎ!」

さら「昔から、食い意地が張ってたものねぇ」

まこと「えへへへへ」

麻衣「いやいや、褒めてないから!」

蓮 「まったく。それはさておき、何を言おうとしてたんだ」

まこと「あ〜、ほら、みんな熱くなってたからさ、かき氷でも食べてクールダウンしないかな〜、って」

さら「そうねぇ」

麻衣「確かに、熱くなってたかも」

蓮 「確かにお前の言うとおりだな」

さら「それじゃぁ、みんなでかき氷食べましょうか♪」

まこと「さんせ〜い」

麻衣「まことも食べるの?」

まこと「当たり前じゃん♪」

蓮 「まったく、お前には敵わんなぁ」

まこと「ということで。店長、かき氷4つね〜」

さら「ついでに、ほうじ茶も4つよろしくね」

麻衣「・・・きたきた。じゃあ、いっただきま〜す」

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項へつづく・・・・

憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?
憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4

憲法改正なのに、市民活動に罰則が!

前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ

登場人物
 さら
 まこと
 麻衣(まい)
 蓮(れん) 
 店長

さら「しかも、憲法改正の場合には更に深刻な問題があって、憲法学者が意見を言えないかもしれないの」

麻衣「どういうこと?」

さら「法律による規制があって、私立の大学教授も含めて、教育者は、その地位を利用することはできないとされているの」

麻衣「地位の利用って? 授業で、賛成に投票しろ、とか言わなければいいってこと?」

さら「何をしたら地位の利用になるかが不明確なの。だから、教授の言うとおりに賛否の投票をしないと卒業されないぞって言うほどの濫用がダメなのか、授業で先生が自分なりの意見を言うことがダメなのか、憲法学者の肩書きを使うことすら禁止されるのか、それは分からないわ」

麻衣「憲法学者って肩書きでテレビに出ただけで、法律違反だってクレームをつけられちゃうってこと?」

さら「そうなる可能性が高いわね」

麻衣「だって、憲法改正なんて難しい話は、その道の専門家が説明してくれないとわからないじゃない。それなのに、憲法学者が話を出来ないってどういうことよ?」

さら「もちろん、どこまでが禁止行為なのか不明確であるから、テレビ局がクレームをつけられても、確固として憲法学者の出演を貫き通してくれれば良いんだけれど」

麻衣「最近のテレビはすぐにクレームに屈しちゃうってことね」

さら「そんな気がしちゃうわよね」

麻衣「もー!、テレビはもっと頑張ってよ!」

さら「他にも問題があって。これは本当に身近な問題なんだけど、市民の運動にも罰則が科されるかもしれないことなの」

麻衣「え! どういうこと?」

さら「・・・実は、みんなで集まってお茶しながら憲法改正の話をしたり、パンフレットを配る行為にもクレームがつくかもしれないのよ」

麻衣「エー!! いやいや、意味わかんないよ」

蓮 「そりゃ、どういうことさ?」

さら「国民投票の法律には、組織的多数人買収及び利害誘導罪というのがあるの」

蓮 「要は、買収禁止ってことか」

麻衣「買収禁止の何が問題なの?」

さら「その規定が曖昧だからいくらでも拡大解釈が可能なのよ」

麻衣「あいまい?」

蓮 「買収を禁止することが、どうして曖昧なんだ?」

さら「ええと。条文を要約すると、だいたいこんな感じかしら。『組織により、多数の投票人に対して・・・』

麻衣「ちょっとまって。『組織』って、犯罪集団ってこと?」

さら「そうじゃないわ。どういう組織なのか、特に限定はないの。だから、ママたちが勉強会を開こうと相談したり、ビラを作ろうと話をしたりしたら、『組織』と認定される可能性があるわ」

蓮 「いやいや、流石にそれはないだろ」

麻衣「そうよ。そんな小さな、しかもお金のない集まりで、買収なんてあり得ないわよ」

さら「それが違うのよね。・・・ねぇ、麻衣は『組織』って、どういうものだと思う?」

麻衣「いきなり難しいこと聞くわね。んーと、そうねぇ。複数の人が、何かの目的のために集まってできた団体のことかな?」

さら「そうね、そういうものだと思うわ。そうすると、話をしていて一緒に何かしましょうか、って意気投合しても、『組織』になっちゃうと思わない?」

麻衣「えー、そうかなぁ? ただ、意気投合しただけでしょ」

さら「んー、それじゃ、団体って何だと思う?」

麻衣「今度は団体かぁ。うーん、何かの集まりとか、仲間とか、かな」

さら「団体っていうけれど、『○○の会』とかを作ろうと思わなくても、何らかの集まりがあったら団体でしょ。そうすると、『組織』っていうのも、特定の団体を作ろうと思わなくても、該当しちゃうと思わない?」

麻衣「うーん、確かに、そうかもしれない。でも、そんなことといったら、誰でも対象になっちゃうじゃん」

さら「そうなのよ。普通に話をしていて、一緒に何かしましょうかって考えることは誰にでもあるわよね。だから、この法律の罰則は、ほとんどすべての人が対象になってしまうの」

蓮 「さら、流石にそれはおかしくないか?」

麻衣「そうよ、おかしいわよ。普通に暮らしている私たちまで、簡単に『組織』だって言われて、犯罪集団みたいに言われちゃうのよ!」

さら「あたしもおかしいと思うわ。でも、そういう法律ができてしまっているのよ」

麻衣「納得いかないわ!」

蓮 「そうえば、さっき言いかけだったよな。組織と言われたからって、必ずしも刑罰の対象になるとは限らないんだろ」

麻衣「確かにそうね。早合点して、ちょっと興奮しちゃって、恥ずかしいわ。そうよね。普通にしてたら刑罰なんて科されないものね。ほら、現金を渡したりしなければ大丈夫なんでしょ」

さら「ところが、大丈夫とは言えないのよ。ここも曖昧なの」

麻衣「これも曖昧なの?」

さら「金銭だけじゃなくて、『憲法改正の賛否に影響を与えるに足りる物品その他の財産上の利益を与えた者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金」を課されるの。一応、『物品その他の財産上の利益』については、『多数の者に対する意見の表明の手段として通常用いられないものに限る』という限定はついているけれど、これも何が『通常用いられる』意見表明の手段か分からないわ」

蓮 「すまん、何が問題なのかよくわからないから、わかりやすく言ってもらえるか?」

さら「まず、『財産上の利益』って何か不明確よね。前に大臣が、うちわやカレンダーを配ったとして問題になったことを覚えてる?」

麻衣「あー、誰の話だか覚えてないけど、あったような気がする」

さら「うちわもカレンダーも、財産的価値にしたら数百円程度かもしれないわ。でも、財産的価値があるとして、公職選挙法上の寄付にあたるとして問題になったの。つまりその程度の内容でも、罪になる可能性がなるってことなのよ」

麻衣「すると、夏の暑いときだからと、みんなに受け取ってもらえるように、賛成意見や反対意見を書いたうちわを配ったら、アウトってこと?」

さら「おそらくそうね」

蓮 「うちわは、普通、意見表明になんて使わないから、例外にも当たらないってことか」

さら「おそらくそう考えられるでしょうね。それから、ママたちが勉強会をしようって、呼びかけをしたら、来てくれた人に、たいていお茶やお菓子を出すわよね」

麻衣「え、まさかそれも買収って言われちゃうの?」

さら「その可能性は高いと思うの」

麻衣「えー!! お茶とかお菓子って、別に特別なことじゃないでしょ。そんなものじゃ、誰だって買収されないわよ」

さら「私もそう思うんだけど、お茶やお菓子って、意見表明するときに普通は使わないわよね。そうすると、利益供与だって言われるかもしれない。少なくとも、そういう指摘をされる可能性があるわ」

蓮 「なんだか無茶苦茶だな。一方では数千万円とかかかる有料広告が無制限なのに、こんな数百円の話が犯罪になっちゃうのかよ」

麻衣「そうそう。その程度で買収って言われるなんておかしいわよ」

蓮 「こんなことまで犯罪にされたんじゃ、不安で、憲法改正の話なんかできないんじゃないか?」

さら「そうなのよ。こんな小さなことでも刑罰を科されるかもしれない。そうするとみんな萎縮しちゃって、必要以上に自己規制しちゃうでしょ。それが問題なの」

蓮 「なあ、さら。今までの話を聞いていると、憲法改正の国民投票になったら、改正は半分決まったような感じだな。」

麻衣「ホント。イメージ戦略が先行して、ちゃんとした情報は入ってこない。友達と話をするときも、犯罪にならないか気を遣わないといけない。こんなのやってられないわよ」

蓮 「でもさ、そうしたら俺たちはどうやって、話し合ったり、問題点を知ったら良いんだよ」

さら「一番必要なことは、私たちが普段から、政治の話題をタブー視しないことだと思うわ」

麻衣「どういうこと?」

さら「今って政治の話をすることが余りないわよね。選挙があっても、例えば同僚と、政党や政策について話す機会はあまりないと思うわ。それに家族でもなかなか話題にしづらいわよね。でも、自分たちの生活に直接関係があることなのだから、日頃からみんなで話すように出来たら良いと思うの。そうしたら、一人が問題点に気がつけば、みんなも問題があると分かるでしょ。そうやって、輪を広げているいくしか無いと思うの」

麻衣「なるほどね。普段から政治ついて話が出来れば、憲法改正の話も出来るはずだもんね。政治の話をすることは市民の当然の権利だって考えて、みんなが普段から行っていたら、警察も問題だって言いにくいってことよね」

蓮 「でもさ、政治の話って、何か話題にしづらいんだよな」

麻衣「そうよね。でも何で言い出しにくいのかしら」

さら「理由は私にもよく分からないわ。でも、このままだと参議院選と同じように、問題点に気がつかない人が多い状況が変えられない気がするの」

麻衣「そうね。何とか出来るかしら」

蓮 「出来る、かな?」

さら「出来ることから始めるしかないと思うわ。今の政治に不安を持っている人は多いと思うの。だから、生活の不安をきっかけに、政治に興味を持つことは、生活を守ることにも繋がると分かってもらえないかしら」

蓮 「政治に興味を持つことが、生活を守るか。そうかもしれないな」

麻衣「政治も、憲法も、ちゃんと意識しないとダメって事だよね。あたし、今まで何も考えてなかったからなぁ」

蓮 「俺もそうだよ」

さら「今からでも遅くは無いわよ。みんなで一緒に考えましょう」

麻衣「そうね。よろしく」

さら「こちらこそよろしくね。・・・・・・・あれ、揺れてる?」

蓮 「大きいぞ!」

麻衣「きゃ〜!!」

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?へつづく・・・

憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?
憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3

憲法改正手続って問題だらけ

前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?

登場人物 
 さら
 まこと
 麻衣(まい)
 蓮(れん)
 店長

麻衣「でも、普通の選挙にも最低投票率がないんでしょ。政治に無関心な人が多いのはどちらも変わらないんだから、憲法改正も同じで良いんじゃ無いの?」

さら「通常の選挙と憲法改正じゃ、その影響力が全く違うのよ」

麻衣「どうちがうの?」

さら「まず、憲法は国の根幹を決めるものだから、慎重にする必要があるというのはわかるかしら」

麻衣「うん、それは何となく分かるわ」

さら「それから、通常の選挙の結果に問題があるとみんなが思ったときは、支持率の低下による内閣の総辞職や、次の総選挙による是正が可能よね」

麻衣「うん、今までもそうやってきたものね」

さら「でも、憲法改正をやり直すためには、何が必要だと思う?」

麻衣「何って・・・、もう一回憲法改正をするだけでしょ」

さら「そのもう一回をするための条件を整えるだけで、かなり難しいの」

麻衣「どういうこと?」

さら「一度憲法改正がされたってことは、是正しようとする立場は、国会の少数派よね」

麻衣「それは当たり前じゃない」

さら「ということは、その少数派が、両議員の3分の2まで勢力を拡大しないと、是正をするための条件が整わないということになるわよね」

麻衣「そっか、多数派と少数派が入れ替わらないといけないのね」

さら「そういうこと。しかも、今回の選挙で、戦後初めて改憲勢力が衆参3分の2を超えたことでわかるように、選挙で大勝し続けるのは大変だし、議席を3分の2以上獲得すること自体がめったにないのよ。それを考えると、少数派が、衆参両院で3分の2まで増やして、間違った憲法改正を是正することは、不可能では無いにせよ、至難の業だと分かってもらえるかしら」

麻衣「なるほどね。わかったわ。普通の選挙と憲法改正の投票の意味が違うなんて、考えたこと無かったわ」

さら「ついでに言うと、もし表現の自由や選挙に関する事項が変えられてしまったら、是正する手段を奪われてしまう可能性もあるわ」

麻衣「あ、そっか。そもそも憲法改正前と同じことができるとは限らないのね。そうすると、憲法改正の場合は、普通の選挙よりも、長期に渡る影響について、真剣に考えないといけないってことじゃない?」

さら「そう思うわ」

蓮 「なあ、さら。俺たちは、選挙と憲法改正の国民投票の意味の違いを初めて知ったけど、普通はこんな話知らないんじゃ無いか?」

さら「確かにそうね」

蓮 「そういう問題意識を、マスコミはきちんと報道してくれるんだろうか?」

さら「その通りなのよ。憲法改正の議論が開始されても、マスコミがきちんと報道しなければ、無関心な人が増えてしまい、いつもの選挙と同じように棄権でいいやって思う可能性が高いわ」

蓮 「それって、マスコミが改憲に手を貸していることになるんじゃないの?」

さら「結果的にそうなってしまう可能性があるわ。もちろん、今回の選挙はたまたまマスコミが選挙を盛り上げなかっただけで、憲法改正についてはきちんと報道してくれる可能性はあるけど」

蓮 「でも、同じようなことをされてしまう可能性もあると」

さら「そうね。残念だけどその可能性が高いと私は思っているの。しかも、今回以上に問題なのは、憲法改正の投票に際しては、憲法改正に賛成する立場からの広告が多くなる可能性が高いの」

蓮 「ん? どういうこと?」

さら「選挙の際は、NHKで政見放送を流していることは知っている?」

蓮 「ああ、一応は。つまらないから、ほとんど見たことないけどな」

さら「憲法改正の際も同じように改正内容の説明や意見がテレビなどで流されるの。詳しく言うと、国会で憲法改正の発議がなされると、衆参議員からなる国民投票広報協議会が組織されて、無料で、テレビ、ラジオ、新聞などの媒体を使って、賛成政党と反対政党の意見と共に、憲法改正案の要旨や説明をできるようになるのね」

蓮 「それって、賛成意見と反対意見の両方が広報されるってことじゃないの?」

さら「政党の意見は賛否両方が行われると思うわ。でも、憲法改正案の要旨や説明はちょっと違うの。要旨などを作成する協議会は衆参両議員から各10名ずつで構成されるんだけど、おおよそ各政党の獲得議席数によって割り当てが決まるの」

蓮 「あれ? そうなると、憲法改正が多数派だから、必ず改正派が多数を占めることにならないか?」

さら「そのとおり。しかも、憲法改正は3分の2で発議されるので、少なくとも賛成派が3分の2以上を占めることになるの」

蓮 「そうすると、いくら公正を期すように求められても、現実の広告の内容は、賛成意見が前面に出て、反対派の意見はあまり出されないってことか」

さら「そう思うわ」

麻衣「ねえねえ。選挙の時って、各政党ごとにお金を出してテレビCMを出してるんでしょ。同じように、お金出してテレビ広告は出せないの?」

さら「スポットCMと言われる広告を出すことができるわ。国民投票は、色々な意見が反映されるべきだから、通常の選挙の際よりも、有料広告の規制が少なめになっているの。だから、基本的にテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などで自由に賛成、反対意見が出せるようになっているわ。」

麻衣「無料の広告では賛成意見が多かったとしても、そのスポットCMで反対意見が多ければいいんじゃない。規制がないのは良いことなんでしょ?」

さら「確かに、反対派が反対派よりも資金的に圧倒的に優位であれば、対等にまで持って行けるかもしないわ。でも、逆に賛成派が資金的に優位だったら、圧倒的な差になってしまうわ」

麻衣「なるほど、そういう危険性もあるのね」

蓮 「なあ、テレビCMって、影響が大きいじゃないか。例えば、出演する俳優さんの好感度によって商品の売れ行きが変わるとかよくあるじゃないか。タレントを使った大々的なCM合戦になっちゃうと、本来の改正の意義とか問題点とかが隠されちゃう可能性があるんじゃないのか?」

麻衣「あー、そうかも。あたしも好きな俳優さんがCMに出てると、ついつい『買わなきゃ!』って思うもの。その商品が他より良いかなんて、気にしたことなかったわ」

さら「そういう側面はあると思うわ。テレビCMって、15秒や長くも1分くらいよね。中身の議論ではなく、印象しか伝わらないでしょ。それが四六時中流れていたら、みんな『何となく』って流されちゃわないかしら」

麻衣「でも、憲法が一度変わっちゃうと、元に戻すことは大変だから、本当は長期的影響まで考えて、冷静に判断しないといけないんでしょ」

さら「その通りだわ。しかもそんなに考えている時間はないの」

麻衣「時間がない?」

さら「国会で憲法改正の発議がされた後、早ければ2ヶ月で投票することになっているの」

麻衣「2ヶ月って結構時間があるような気もするけど。短いの?」

さら「短いと思うわ。もちろん、国会で細かい問題点まで網羅した議論がされて、それが逐一報道されて、人々が国会審議の間から考えているなら、何とかなると思うの。でも、3分の2という大多数が憲法改正に賛成するような状況って、反対意見の少数派は審議時間も少ないし、多数派が細かい議論を無視して採決してしまう可能性があるわ」

麻衣「参院選のときにマスコミは争点隠しをしてしまったように、問題点をきちんと伝えてくれない可能性もあるわね」

さら「そうね。しかも、憲法改正の発議後は、有料広告が大手を振って行われるでしょ。テレビ・ラジオ等で、タレントを使って、改正賛成をすれば暮らしがよくなる、明るい未来が訪れるという印象のCMなどが沢山流される。そういう時の2ヶ月なんてあっという間に経ってしまうわ。そこでの投票って、冷静に考えた結論よりも、雰囲気に流されて投票してしまう可能性が高くないかしら」

麻衣「確かに、そうかも。一度クールダウンするためには、時間が必要よね」

さら「一応クールダウンのためにと、投票前の14日間に限りスポットCMが制限される期間が設けられているわ」

蓮 「おいおい。それって逆に言うと、スポットCMが自由に行われている状況では冷静な判断はできないって、認めてるんじゃん」

麻衣「意味わかんないよ。最後の2週間だけで冷静に判断しろって言われたって、無理だってば」

さら「わたしもそう思うわ。でも、今はこの制度によって改正手続きが進められてしまう。だから、もし憲法改正の議論になった場合は、国会審議が始まる前から、情報を集めるなどして、冷静に考えておく必要があると思うの」

麻衣「できるかな。あまり自信ないな」

蓮 「俺も、正直自信ないわ」

さら「そういう人は多いと思うわ。でも、『何となく』に流されないためには、普段から、考える癖をつけるしかないと思うの」

蓮 「考える癖か・・・、そういうのって苦手だな」

麻衣「あたしも」

さら「そういう人のために、代わりに考えてくれて、わかりやすく説明してくれる報道機関の重要性があるのだけど」

麻衣「報道機関は、その責務を果たしてくれてないってことね」

さら「そういう危惧があるわ」

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!へつづく・・・

憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?
憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2

 憲法改正って何?

前回の話 憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ

登場人物
 さら
 まこと
 麻衣(まい)
 蓮(れん)
 店長

蓮 「そうだよな。「何も分からなかったんだ」とか「気がついたら変わってたんだ」とか言っちゃいそうだけど、それって言い訳だもんな」

麻衣「でも、日々のことばかりに追われて、国がどうなっているかなんて、そんな大きな事なかなか考えられないよ」

さら「確かに、そういうことはあると思うわ。でも、独裁国家ではなく、民主主義国家なんだもの、この国が変わってしまえば、それは私たちの責任なのよね。子どもたちに、良い国を渡してあげるのは、私たちの義務だと思うわ」

蓮 「そうだよな。「ごめん。こんなもんしか渡せなかった」なんていうのは、格好悪いもんな」

麻衣「そうよね。少しは頑張らなくっちゃね」

さら「一人で頑張る必要は無いわ。この国には、1億人も一緒に考えてくれる仲間がいるんだもの。みんなで知恵を出し合えば、良い未来が作れるわ」

麻衣「でもさ、逆に考えると、悪い方向に変えようとする仲間も1億人いるかもしれないってことでしょ。それって怖いな」

蓮 「おいおい、いきなり後ろ向きだな。それを止めるにはどうしたら良いかって事を、考えれば良いじゃんか」

麻衣「それも、そうね。やる前から諦めちゃうって、格好悪いもんね」

蓮 「そういうこと。ということで、さら、憲法改正について教えてくれるかな」

さら「憲法改正には、衆参で3分の2の賛成と、国民投票が必要だということは知ってる?」

蓮 「なんとなく」

麻衣「それくらいなら、なんとか分かるわ」

さら「憲法改正は、何でも変えられるわけではなくって、限界があると言われているの」

蓮 「限界?」

さら「一応、理論的には、日本国憲法の三大原則は、憲法改正によっても変えられないと言われているの」

麻衣「三大原則?」

さら「国民主権、基本的人権の尊重、平和主義ね」

麻衣「じゃあ、憲法改正されても、平和が無くなるとか、人権が無くなるとか言ってるのは、嘘って事ね」

さら「それが違うのよ」

麻衣「どう違うの?」

さら「憲法違反と言われる安保法制が、一昨年国会を通過したことを覚えている?」

麻衣「うん。それくらいは、覚えているわ」

さら「憲法に違反する法律は無効とされるというのだけど、最終的に裁判所で決定されるまでの間は、その法律はどうなると思う」

麻衣「無効なんだから、使われないんでしょ」

さら「違うわ。裁判所で無効とされない限り、有効であるとして使われてしまうの。だから、今年に入って、改正された安保法制を根拠に自衛隊が南スーダンへ派遣されたわ」

蓮 「えー、無効なのに有効なの??」

さら「そう。形式上法律が制定されてしまえば、本当は無効であっても、国はどんどん進んでしまうの」

蓮 「それじゃ、憲法改正だって、三大原則は変えられないって言っても、実際に憲法が改正されてしまったら、そのまま国は動いてしまうってこと?」

さら「その通り。改正に限界があると言っても、実際に改憲されてしまったら、元に戻すことはなかなか難しいわ。裁判所に判断してもらえば良いという考えもあるけど、憲法改正の可否は、高度に政治的であるとして裁判所は判断しない可能が高いの。だから、憲法改正については、国民投票になる前からしっかりと考えていないといけないわね」

麻衣「しっかりテレビの情報をもとに考えるってことね」

さら「そうとも言えないのよ」

麻衣「どうして?」

さら「さっきも少し言ったけど、マスコミは役割をきちんと果たしてないと思うの。去年の参議院選の時、ほとんど憲法改正の議論がされなかったわ。でも、参議院選挙の争点は、本当は憲法改正の是非だけだったの」

麻衣「え!? そうだったの?」

さら「衆議院は与党が過半数をとっていて、参議院でも過半数は間違いない情勢だったでしょ。そうすると、通常の政策は、今までと変わらないことは分かり切っていたのよね。だから、現実的な争点は、憲法改正の発議に必要な3分の2を改憲勢力がとるか否かだったの」

蓮 「あー、だから投票後の選挙特番になったら、急に3分の2の攻防とか言い出したんだ」

麻衣「最初からわかってるんだったら、選挙前に報道してくれれば良いのに」

さら「そうね。事情がよくわからない市民のために、表面上の公約に捕らわれずに、選挙の意味をきちんと伝えることがマスコミの役割なのよね」

蓮 「でも、マスコミはその役割を放棄しちゃったって事なのか」

麻衣「ほんと、そうよね。といっても、あまり真剣に見てなかったってのもあるから、私も悪いのかな・・・。でもさ、憲法改正が争点だって、分かりやすく、きちんと伝えてくれたらいいのに・・・」

さら「マスコミがどうして争点隠しに手を貸したのか、詳しい事情はわからないわ。でも、マスコミがきちんと伝えなかったことで、選挙の争点が憲法改正だと分からなかった人が多かったことと、関心を持たないで棄権してしまった人が増えたことは間違いないと思うの」

麻衣「そうね」

蓮 「同感」

さら「憲法改正の際は、国民投票が行われるんだけど、今の参議院選挙のマスコミ報道と同じ事が行われると、どういう影響があると思う?」

蓮 「改正された場合に、何が変わってしまうのか、よくわからないまま投票してしまうってことかな」

麻衣「憲法改正の国民投票があるなんて知らない人が出てしまうと思うわ」

蓮 「他には・・・・自分に関係ないと思って、棄権してしまう人が増えちゃうかな。でも、国民の半分が賛成しないと、憲法って変えられないんだよな。だったらこれは違うか」

さら「いいえ、あってるわ」

蓮 「えっ?」

さら「国民投票には、最低投票率が決められてないの。それから更に注意しなければならないのは、白票などの無効票を除いた有効得票数の過半数で足りるという点ね」

蓮 「えぇ!?・・・ってリアクションしてみたけど、よくわからん。結局どう問題になるんだ?」

さら「えっと、そうねぇ・・・。例えばこんな呼びかけがあったらどう思う? 『私たちは憲法改正手続きなど望んでいません。このような投票が行われること自体に反対の意思を表明するために、国民投票をボイコットしましょう』とか『国民投票が行われることに反対の意思を表明するために、白票を投じましょう』とかね」

蓮 「んー、そうだな。俺たちが望んでいないのに、憲法改正の手続きを勝手に進められたって気持ちがあったら、そういう怒りの意思表示のためにボイコットしたいって気持ちも分かるな」

さら「他にも、わざわざ投票所まで行って反対票を投じるよりも、何もしないで反対の意思表示ができればその方が望ましいとか、よくわからないから反対とまではいえないけど、白票ならいいかって、考える人もいるかもしれないわ」

蓮 「おー、確かにそういうのもありそうだな。で、それがどうしたんだ?」

さら「これらの呼びかけを真に受けてボイコットや白票を投じてしまうと、憲法改正の賛成票が重みを増してしまうの」

蓮 「えっ? どういうこと?」

さら「最低投票率がないということは、ボイコットは反対の意思表示にならないということなの。結果は、ボイコットの数に関係なく、有効投票の数だけで決まってしまうわ」

蓮 「じゃあ、ボイコットなんて意味ないじゃん」

さら「そのとおりね。それから白票も反対の意思表示にならないの。実際に投票された数ではなく、白票などの無効票を抜かした、有効得票数しかカウントされないのよ」

蓮 「えー、じゃあ、極端な話、99%がボイコットして、1%した投票しなかった。しかも、投票した人のうち、99%の人が抗議の白票を投じた。その場合は、99.99%の人たちの意思は全く無視されてしまい、有効投票をした0.01%の人たちの過半数、つまりたった0.005%の人たちが憲法改正に賛成だったら、改正されちゃうってことか?」

さら「そういうことになるわね。ボイコットや白票を投じることは抗議の意思表示だと、その人は思っているかもしれない。でも、現実の投票においては、抗議の意味がないどころか、かえって改憲改正に寄与する結果になってしまうわ」

麻衣「ねえねえ。ボイコットや白票だって、今の憲法でいいって言う意思表示なのに、なんでその意見が無視される投票制度になっちゃったの?」

蓮 「そうそう、おかしいよな。憲法改正って、変えたい人たちが多いから変えるって話だろ。ボイコットや白票が沢山あれば、それは変えたくないって意見が多いってことなのにさ。それなのに、今のままでいいって意見が一番反映されない形っていうのは、どういうことなのさ」

さら「最低投票率をもうけるべきだという意見や、無効票も含めた過半数にすべきだという意見はもちろんあったわ。でも、その意見は採用されなかったの」

蓮 「憲法改正したい人たちの意見が採用されたってことか」

さら「そういうことね」

憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ へつづく・・・・

憲法改正と緊急事態条項のはなし  パート1 プロローグ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート2 憲法改正って何?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート3 憲法改正手続って問題だらけ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート4 憲法改正なのに、市民活動に罰則が!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート5 緊急事態条項ってなに?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート6 危険がひそひそ緊急事態条項
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート7 緊急事態条項って、いる?いらない?
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート8 緊急時も濫用防止!
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート9 災害時には緊急措置があるよ
憲法改正と緊急事態条項のはなし パート10 国会議員の任期延長?
憲法改正と緊急事態条項のはなしパート11(完) デマに流されないで